「かぶに栄養はない」は誤解?栄養士が根・葉・皮まで解説する本当の魅力

かぶは古くから日本で親しまれる野菜で、根だけでなく葉や皮にも豊富な栄養が含まれています。ビタミンCや食物繊維を含み、低カロリーながら健康的な食事に役立ちます。白かぶや赤かぶ、小かぶなど種類ごとの特徴や旬の時期、調理法による栄養の違いも詳しく解説しています。

「かぶに栄養はない」は誤解?栄養士が根・葉・皮まで解説する本当の魅力

かぶはどんな野菜?基本情報と種類

かぶの特徴と旬の時期

かぶはアブラナ科に属する野菜で、紀元前から栽培されていたといわれるほど歴史の長い食材です。日本でも古くから親しまれており、『古事記』や『万葉集』にも登場するほど馴染みのある野菜です。見た目は大根に似ていますが、実際には別の品種で、かぶの方がやや小ぶりで、丸くて柔らかい根を持つのが特徴です。

かぶの根の部分は白くて滑らかな表面をしており、内部も白くて緻密な肉質をしています。加熱するととろけるように柔らかくなる一方で、生のままでも辛みが少なく、シャキシャキとした軽やかな食感を楽しむことができます。また、かぶの葉や茎にも栄養が豊富に含まれており、無駄なく使えるのも魅力のひとつです。

かぶの旬は春(4月~6月)と秋(10月~12月)の2回あり、二期作が可能な野菜です。春に出回るかぶは、特にみずみずしくて柔らかいため、生のままサラダや浅漬けとして食べるのに向いています。一方、秋のかぶはややしっかりとした肉質で煮崩れしにくく、煮物や味噌汁、スープなど加熱調理に適しています。旬の時期は栄養価も高く、価格も手頃になるため、積極的に食卓に取り入れるとよいでしょう。

白かぶ・赤かぶ・小かぶなどの種類と違い

かぶにはさまざまな種類があり、地域ごとに伝統的に栽培されている在来品種も多く存在します。一般的によく見かけるのは「白かぶ」で、表面も内部も真っ白な色をしており、直径5~10cmほどの球状をしています。クセが少なくて料理の用途も広く、家庭料理から和食店の一品料理まで、幅広く使われているポピュラーな品種です。

「赤かぶ」は表皮が鮮やかな赤色をしており、切ると中は白いのが特徴です。見た目の美しさから、酢漬けや甘酢漬けなどに利用されることが多く、加熱すると色が抜けやすいため、生で使う料理に適しています。特に長野県や岐阜県などでは、地域独自の赤かぶの品種が伝統野菜として守られており、祭事や郷土料理に使われることもあります。

「小かぶ」はその名の通り小ぶりなかぶで、特に根が柔らかく、皮も薄いため、皮ごと調理できるのが魅力です。スーパーで一年中見かけることも多く、保存も比較的しやすいので家庭でも使いやすい品種です。サラダ、浅漬け、スープなど、素材の食感や風味を生かす料理に向いています。

そのほかにも、京都の「聖護院かぶ」や金沢の「源助かぶら」など、地域色の強い丸かぶや長かぶの在来品種もあります。これらは一般的なかぶよりもサイズが大きく、肉質もしっかりとしているため、千枚漬けや煮物などに用いられています。各地域の風土や料理文化に合わせて進化してきた多様なかぶの品種を知ることで、より深くこの野菜を楽しむことができるでしょう。

かぶの栄養成分|根と葉で異なる栄養価

かぶの根の栄養成分表(可食部100gあたり)

かぶの根の部分には、水分が多く含まれており、100gあたりのエネルギーは約20kcalと非常に低カロリーな食材です。主な栄養素としては、ビタミンC(約19mg)や食物繊維(約1.5g)が挙げられます。特にビタミンCは水に溶けやすく熱に弱い性質があるため、生で食べることで効率よく摂取できます。また、消化酵素のアミラーゼ(ジアスターゼ)を含み、食後の胃の働きを穏やかにサポートしてくれる点も見逃せません。

さらに、カリウム(約280mg)も比較的多く含まれており、体内の余分な塩分を排出するのに役立つ栄養素です。その他、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分も含んでいますが、全体的には淡色野菜に分類されるため、栄養価は控えめに見えるかもしれません。しかし、食事のバランスを整える上では、かぶのような水分と食物繊維に富む野菜は欠かせません。

かぶの根の栄養成分表(可食部100gあたり)
栄養素 含有量 備考
エネルギー 約20kcal 低カロリー
ビタミンC 約19mg 水に溶けやすく熱に弱い
食物繊維 約1.5g
カリウム 約280mg 余分な塩分の排出に役立つ
アミラーゼ(ジアスターゼ) 消化を助ける酵素。特にでんぷんの分解に関与
カルシウム 微量 骨の形成に関与
マグネシウム 微量 ミネラルの一種。体内で様々な酵素反応に関与

かぶとかぶを使った料理の栄養

かぶは生でも加熱しても楽しめる万能野菜で、料理の仕方によって栄養価や風味が変わります。ここでは、かぶそのものの栄養成分に加えて、代表的なかぶ料理の栄養を表にまとめて比較してみました。漬物やスープ、煮物など、調理法による栄養の変化を知ることで、目的や好みに応じた食べ方を選ぶ手助けになります。

料理名分量重量(g)カロリー
かぶの栄養1個131gの可食部(119g)11921kcal
かぶの葉の栄養1本20gの可食部(14g)143kcal
かぶの漬物の栄養1枚(10g)102kcal
かぶの糠漬けの栄養1枚(10g)103kcal
かぶの味噌汁の栄養お椀1杯(257g)25754kcal
かぶのサラダの栄養中皿1皿(179.5g)179.545kcal
かぶの煮物の栄養1人前(186.9g)186.954kcal
小松菜とかぶの煮浸しの栄養1人前(288g)28863kcal
かぶの葉のふりかけの栄養1人前(36.5g)36.530kcal
かぶのクリーム煮の栄養1人前(303g)303227kcal
かぶとベーコンのスープの栄養1人前(217.3g)217.367kcal
かぶの葉の漬物の栄養1人前(46.65g)46.6517kcal
かぶの葉の佃煮の栄養1人前(91g)91145kcal
かぶのそぼろあんかけの栄養1人前(373g)373269kcal
かぶのポタージュの栄養1人前(143.2g)143.2135kcal
かぶの葉のおひたしの栄養1人前(32g)3227kcal
かぶおろしの栄養1人前(82g)8228kcal
かぶの浅漬けの栄養1人前(102g)10218kcal
かぶとゆずの甘酢漬けの栄養1人前(103g)10333kcal
かぶの葉と油揚げの煮浸しの栄養1人前(227g)22793kcal
かぶの炒め物の栄養中皿1皿(125g)125135kcal

かぶの葉の栄養成分|根よりも豊富な成分も

かぶの葉には、根よりも多くの栄養が含まれていることをご存知でしょうか。特に注目したいのが、βカロテン、ビタミンK、カルシウム、鉄分、食物繊維の量です。可食部100gあたりのビタミンKは約340μg、カルシウムは約250mg、βカロテンは約3,000μgにも達し、葉物野菜の中でもトップクラスの栄養価を誇ります。

かぶの葉の栄養成分表(可食部100gあたり)
栄養素 含有量 備考
βカロテン 約3,000μg 色素成分
ビタミンK 約340μg 脂溶性ビタミン
カルシウム 約250mg ミネラル
鉄分 微量ミネラル
食物繊維 炭水化物の一種

葉の部分は緑黄色野菜に分類され、免疫の維持や骨の形成に関わる栄養素が豊富です。また、葉には葉酸やビタミンCも含まれており、特に妊娠中や成長期の食事には積極的に取り入れたい部分です。根の部分に比べるとクセがややあるものの、塩茹でしておひたしや和え物にすることで食べやすくなります。捨ててしまう方も多い部分ですが、むしろこちらを主役にしたいほど栄養的価値が高い部位です。

赤かぶ・小かぶなど品種ごとの栄養傾向

かぶの栄養価は品種によっても多少の違いがあります。赤かぶは、皮の部分にアントシアニン系の色素が含まれており、ポリフェノールの一種として注目されています。抗酸化性があり、見た目だけでなく機能性も期待されている食材です。また、赤かぶは酢漬けにして食べることが多いため、調理による栄養の変化にも配慮が必要です。

一方、小かぶは比較的若い状態で収穫されるため、根が柔らかく、水分とビタミンCを多く含みます。加熱しても煮崩れしにくい一方で、ビタミンCの損失が起きやすいので、短時間の調理を心がけると良いでしょう。地方品種である「聖護院かぶ」や「源助かぶら」などは、栄養成分そのものに大きな違いはないものの、肉質や繊維の強さに違いがあり、調理方法の適性に差が出てきます。品種ごとの特徴を知ることで、より効果的に栄養を摂取することができます。

栄養士として感じた、かぶを食べるメリット

かぶを日常の食事に取り入れて感じたこと

栄養士として日々の食事にかぶを取り入れて感じるのは、調理のしやすさと料理のバリエーションの広さです。生のままサラダにしたり、浅漬けやぬか漬けにしたり、加熱して煮物やスープにするなど、1年を通して無理なく食卓に取り入れられる点が魅力です。食感も味もやさしく、どの年代の方にも好まれやすいため、家族全員が食べやすい野菜として重宝しています。

また、食物繊維が程よく含まれているため、食後の満足感が得られやすく、主菜や副菜のバランスをとるうえでも便利です。栄養価が突出して高いわけではありませんが、食生活の土台を支える存在としてかぶのような野菜があることで、毎日の食事が安定しやすくなると実感しています。

かぶの葉や茎を無駄なく使う工夫

日々の料理でかぶの葉や茎をどう活用するかは、家庭でも職場でもよく話題になります。葉は傷みやすいため、購入したらできるだけ早く使い切ることが大切です。おすすめの使い方は、刻んでごま油で炒め、醤油とみりんで味付けしたふりかけや、細かく刻んで味噌汁の具に加える方法です。茎の部分はシャキッとした食感を活かして、ナムルや漬物にするのもおすすめです。

冷凍保存する場合は、さっと塩茹でしてから刻んで保存袋に入れておくと、必要なときにすぐ使えます。こうした工夫を習慣化することで、食材を無駄にせず、栄養価も損なわずに取り入れることができます。葉付きで販売されているかぶを選ぶことで、こうした活用ができるのもひとつの楽しみです。

「栄養がない」は本当?誤解を解く実体験

かぶは「水分が多くて栄養がない」と思われがちですが、実際に日々の献立に取り入れてみると、その印象は大きく変わります。特に葉の部分には、一般的な葉物野菜と比べても遜色のない栄養が含まれており、捨ててしまうのは非常にもったいないと感じます。家庭で葉を無駄にせず使い切ることで、自然と野菜の摂取量が増え、全体の栄養バランスも整いやすくなりました。

また、調理のしやすさや味のなじみやすさもあり、毎日の食卓でストレスなく取り入れられるという点では、健康的な食習慣の継続に貢献してくれています。目立つ栄養素が少ないというだけで「栄養がない」と断じるのは早計で、むしろバランスのよい食材として再評価すべきだと強く感じています。

かぶの栄養を活かすおすすめの食べ方

かぶは生でも加熱しても美味しく食べられる野菜で、調理法によって栄養の摂取効率が変わってきます。特に葉の部分は栄養が豊富なので、上手に活用することで食事の栄養バランスを高めることができます。

生で楽しむ:酢漬けや浅漬けの魅力

かぶの根は、シャキシャキとした歯ごたえとやさしい甘みが特徴で、生のまま酢漬けや浅漬けにすると、ビタミンCなどの水溶性の栄養素を損なわずに摂ることができます。特に皮ごと使うと、食物繊維やポリフェノールを無駄なく摂取できます。葉も軽く塩もみして加えると、彩りと栄養価がさらにアップします。

加熱調理での栄養変化|茹でる・蒸す・スープ

加熱によって一部のビタミンCや葉酸は減少しますが、かぶの根に含まれるでんぷん分解酵素は、温めることで甘みが引き立ち、食べやすくなります。蒸す場合は栄養の流出が抑えられるためおすすめです。また、スープにすれば溶け出したミネラルやビタミンも汁ごと摂取できるため、効率的に栄養が摂れます。葉も味噌汁の具や炒め物として活用できます。

皮や茎はどうする?捨てずに活かす調理法

かぶの皮には食物繊維が多く含まれており、薄くむいた皮はきんぴらや炒め物、漬物などに再利用できます。茎の部分にはビタミンCやカリウムが含まれており、細かく刻んでチャーハンやお浸し、スープに加えると無駄がありません。根・葉・茎をセットで使うことで、栄養を丸ごと摂ることができます。

保存方法と栄養価の変化

かぶは保存方法によって栄養の保持状態が大きく異なります。特に葉は傷みやすく、常温ではすぐにしおれてしまいますが、適切な保存をすれば数日から数週間おいしく保てます。保存法に応じて栄養がどのように変化するのかも理解しておくと、無駄なく使い切ることができます。

冷蔵・冷凍保存での栄養変化

かぶの根は葉を切り離してポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存するのが基本です。葉は茹でてから冷凍すると色や栄養が保たれやすくなります。冷凍保存する場合は、あらかじめスライスしたり茹でたりしてから保存することで、解凍後の調理がしやすくなります。冷凍によるビタミンCの減少は避けられませんが、加熱調理に適した状態で保存できるメリットがあります。

干しカブ・ぬか漬け・味噌漬けの栄養的特徴

かぶを干すことで水分が抜け、食物繊維やミネラルが凝縮されます。干しカブは煮物や炒め物に加えると、歯ごたえと旨味が増します。また、ぬか漬けや味噌漬けなどの発酵保存は、ビタミンB群の増加や乳酸菌の摂取にもつながります。発酵食品としての側面もあるため、常備菜としても活用できます。ただし塩分が高くなることがあるため、食べすぎには注意が必要です。

他の野菜との比較:大根との栄養の違い

かぶとよく比較されるのが大根ですが、見た目や食感が似ていても、それぞれに異なる栄養的な特徴があります。どちらもアブラナ科の野菜で、淡色野菜に分類されますが、含まれるビタミンやミネラル、使われ方には明確な違いがあるため、上手に使い分けることで食生活の幅が広がります。

かぶと大根の栄養成分を比較

かぶと大根の根の部分を比較すると、エネルギー量はほぼ同じで、どちらも低カロリーです。ただし、かぶは糖質がやや多く、やわらかな甘みがあります。一方、大根は食物繊維とビタミンCの含有量がわずかに高く、辛み成分であるイソチオシアネートも含まれており、抗酸化作用が期待できます。葉の部分にも違いがあり、かぶの葉はビタミンA(β-カロテン)やビタミンK、カルシウムが豊富なのに対し、大根の葉はビタミンCやカリウムがやや高めです。それぞれの栄養を活かして食事に取り入れるのが理想的です。

料理での使い分けと栄養活用のコツ

かぶは柔らかく火が通りやすいため、煮物やスープに向いています。短時間で調理できることから、栄養素の損失が少ないのも利点です。また、生でサラダや浅漬けにすればビタミンCを効率よく摂取できます。大根は繊維質が多く、煮崩れしにくいため、おでんやぶり大根など長時間煮込む料理に適しています。また、おろして食べることで酵素(アミラーゼ)を生かし、消化を助ける効果も期待できます。かぶと大根は見た目こそ似ていますが、それぞれの特徴を理解して使い分けることで、調理の幅も栄養の摂り方も広がります。

まとめ:かぶを無駄なく味わい、栄養をまるごと楽しむ

かぶは根・葉・茎と捨てるところが少なく、すべての部位に異なる栄養素が含まれている魅力的な野菜です。生でも加熱でもおいしく食べられ、調理法を工夫すれば栄養価を損なうことなく摂取できます。葉や皮、茎を活用することで、食品ロスを防ぎながら食卓を豊かにすることができます。また、大根との違いを理解し、料理に応じて使い分けることで、よりバランスの良い食生活を実現できます。日々の食卓にかぶを取り入れ、旬の味とともに栄養をまるごと楽しんでみてはいかがでしょうか。

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大槻 まどか

趣味はおいしいものを食べること。そのためには美味しいものを作らなくちゃ!って感じでお料理大好きな主婦ライターです♪