イギリス式の食事マナー
イギリス式ではフォークの背に料理を載せますが、フランス式はフォークの窪みに載せて食べます。
これは家紋や飾りを来客に披露することが関係しています。
イギリスはナイフとフォークの表に、フランスでは裏に家紋等が刻まれているため、両国のテーブルマナーに違いがあるのです。
ナイフとフォークの使い方も、イギリスとフランスでは大きく違います。フランスでは許されている「フォークを右手に持ち替えて食べる行為」は、イギリスではマナー違反です。
ちょっとしたエチケットを知っているのと知らないのでは、欧米生活や旅行中に相手に与える印象が大きく変わってきます。
日本では、人を招いた際に客が着席するのを待ってから招いた側(ホスト)が座るなど、「客を優先するのがおもてなし」とされていますが、イギリスの食事マナーでは、着席する順番やナプキンを膝に掛けたり、食後にテーブルにナプキンを置く順番も「ホストが先でゲスト(客)が後」と違いがあります。
今回はフランス式のマナーとの比較を交えながら「基本的なイギリス式の食事マナー」を紹介します。
日本の洋食マナーはイギリス式
恐らく、イギリスは世界で最もマナーを重んじる国でしょう。とりわけ、テーブルマナーについては、その格式の高さで有名です。
日本でも馴染がある洋食の食事マナーとして、代表的なものには「フランス式とイギリス式」の2通りありますが、日本で一般的なテーブルマナーはイギリス式です。
着席の順番とバッグを置く場所
着席は女性が優先です。レストラン内へ入るときも、テーブルに着くときもレディーファーストです。
レストランのメートル・ドテル(給仕係の長)やホスト(客を招く主人)が案内した席には、女性が着席してから男性が座ります。
女性は持ってきたハンドバッグを座席の左側の床の上に置きます。というのも、イギリスでは座席に着席するのは、必ず、左側からなので、右側に物を置くと隣人の出入りの邪魔になるからです。
ナプキンの使い方
着席したホストがナプキンを膝に掛けるのを待ってから、自分の膝にかけるのがイギリスのテーブルマナーです。
音を立てず、ゆっくりナプキンをほどきます。
ナプキンを膝にかける順番
- ホストが先
- ゲストが後
ナプキンは半分または1/3に折って、折り目を手前にして膝に置きます。
三角形にして、端を膝の下に挟んで落ちないようにすることもできます。
レストランで食事中にナプキンを床に落としてしまった場合は、自分では拾わずに給仕係に頼みます。
その場合、声を出して依頼するのではなく、視線をおくって目で伝えるか、指を上げて合図を送るのがマナーなのですが、くれぐれも横柄な態度をとらないように注意しましょう。
ナプキンは主に口元を拭くための目的で使われます。
とりわけ、ワインを飲むときにグラスに油が付着して汚れないようにするためでもあります。ナプキンでテーブルや顔を拭いたりしてはいけません。
食後は、簡単にたたんで自分のテーブルの左側に置きますが、始まりと同じようにホスト(招いた側)がナプキンを置くのを待つのが礼儀です。
パンの食べ方
小さくちぎって食べるのがイギリスの食事マナーで、パンを直接かじるのは禁物。
パン皿の上で一口大にパンをちぎって、パンくずがテーブルクロスの上に落ちるのを避けるのが理想です。
もし、テーブルの上にパン屑が散らばっても、自分で払い落す必要はありません。
ウェイターやメイドは、それらに対応するために給仕しているからです。
パン皿がない場合は、直接テーブルクロスの上に置いても構いません。
皿に残ったソースをパンに浸して食べるのは、正式なイギリスの食事マナーに反します。
しかし、公式上はしないことですが、小さくちぎったパンを皿の上に置き、フォークでパンを刺してソースをさらうことは許されています。
公の場ではなく自宅などへ食事に招かれた場合は、カジュアルな対応に寛容な人もいるので、ホストの食べ方に合わせるなどをして臨機応変に対応しましょう。
スープの飲み方
イギリスでは、スープは手前から奥へすくい、スプーンの横側から飲みます。残りのスープは、手前を持ち上げ傾けて飲み終えます。
イギリスの食事マナー
- 手前から奥へスプーンを動かす
- スプーンの横に口をつけて飲む
この点が、フランスと違うところです。
フランスでは、奥から手前にすくい、スプーンの先を口に近づけて飲みます。
スープを飲む際に頭を下げないで、姿勢を正したままスプーンを口の高さまで運んで飲むという、両国のテーブルマナーには共通点があります。
ナイフとフォークの並べ方と使い方
箸を使い慣れている日本人にとって、いつも厄介な「ナイフとフォークの使い方」。
イギリスでは、ナイフとフォークの数が多いのが特徴で、皿の左側にフォーク、右側にナイフとスプーンが並びます。
フランスと同様、皿から一番遠いものを順番に使います。
イギリスとフランスの大きな違いがナイフとフォークの並べ方です。イギリス式は表に向けて置きますが、フランス式は伏せて置きます。
イギリスの食事マナー
- ナイフとフォークは表側を上にして置く
食後のフォークとナイフの置き方は、イギリスでは皿の上に6時の位置に縦平行に置きますが、フランスでは皿の右側3時、または4時の位置に2本を平行に並べて置きます。
手土産・時間・服装のマナー
フランスと同様に、イギリスでも食事に招待されたら手ぶらで赴くのはマナーに欠けた行為です。
ワインやチョコレート、または花束などを御礼に持っていくのが礼儀です。
食事に招待されたら、必ず、約束時間を守るのがイギリス。但し、早く着き過ぎるのは礼儀に反するので、時間通りに到着するのがマナーです。
反対に、フランスではゲストは少しだけ遅れていくのがどちらかといえばスマートです。但し、5分ぐらいまでの遅れなら許容範囲ですが、それ以上だと失礼に当たります。
ドレスコードの厳しさは、フランスよりもイギリスが勝っています。レストラン(パブではなく)では、男性ならスーツにネクタイ、女性ならドレスを着用。靴などにもチェックが必要です。
イギリスならではアフタヌーン・ティーのマナー
イギリスにいると、絶対に避けられない場面がアフタヌーン・ティータイムです。もちろん、マナーに厳しいイギリスでは、簡単な昼のお茶時間であっても守らなければならないルールがあります。
アフタヌーン・ティーに招待された時の注意点は以下のとおり。
アフタヌーン・ティーは、通常ミルクティーのことですが、ミルクが苦手な場合は、事前にホストへ知らせておく。
カップを持つ手とフード(お菓子やサンドイッチ等)を分ける。
お菓子などの油が付着した手でカップを持つと、滑って割ってしまう恐れがあるからです。
必ず受け皿(ソーサー)とティーカップが一対のティーセットで飲みますが、「ソーサーを持つ・持たない」はテーブルの高さによって違います。
カップとソーサー/持ち方マナー
- 高さがあるテーブルの場合
→カップのみ持って飲む
- 低いテーブルの場合
→カップとソーサーを持って飲む
カップの取手は指で挟むようにして持ちます。取手の中に指を通すのはよくありません。
また、おかわりを頂くときは、ソーサーとカップを一緒に両手で持ちながらホストから紅茶が注がれるのを待ちます。
フランスではOKでもイギリスでは絶対駄目なマナー
フランスでは食事の最中に、必ず、手をテーブルの上に置くのがマナーですが、イギリスでは食事をしない間は、両手さえもテーブルの下に置くこととされています。
菜食主義が普及しているイギリスではでは、食事へ招待された時に万一のトラブルを避けるために、特別な食事療法の有無を問われる機会があります。
また、誰かを食事に招待する場合も、イギリスではゲストに事前に尋ねるのがエチケット。
因みに、フランスでは、同様の質問をされることはほぼ皆無ですので、事前にそれとなくゲスト側から自発的にアレルギー等や食事療法で食材に制限を設けていることを伝えるのがエチケットとされています。
マナーは覚えて守って損はない
食事マナーに限らず、公共の場でのマナーというのは、スムーズなコミュニケーションを可能にするための手段です。
マナーがないから生きていけないことはありませんが、振る舞いへの意識やその国ならではの文化への配慮が欠けることにより、失敗したり品格を落としたりして、人間性自体を疑われてしまうこともあります。
自分の体裁だけではなく、食事を共にする相手、周囲の人、レストラン等のスタッフなども気分よい時間を過ごせるために、基本的な食事マナーを習得しておくことをお勧めします。