フレンチの食べ方大丈夫?
結婚披露宴など改まった場以外では食べる機会の少ない本格的なフランス料理ですが、いざ食べるときに「マナーを気にしすぎて味が分からなかった!」となってしまうのは悲しいもの。
今回は、一般的なフレンチのコース料理の流れとそれぞれの食べ方をご紹介していきます。
フランス料理をコースで食べる
フレンチのコースをオーダーするとオードブルから始まり、肉、野菜、魚、スイーツと様々な食材・料理が供され、最後はコーヒーや紅茶を一杯頂いて終わります。フランス料理の基本は前菜1品、メイン1品、デザート(またはチーズ) なので、アラカルトを頼む場合も意識するといいでしょう。
また、男性は女性が食べ終わるよりも極端に早く食べ終わってはいけません。女性のペースに合わせて、ワインを飲んだり会話を楽しんだりするのが紳士です。
マナー違反しやすい「パン」
パンは、あらかじめパン皿に置かれているか、ウェイターによって運ばれてくるかします。おかわりが出来るので、最初から沢山取らずに好きなものを取って左側にあるパン皿に置きます。パン皿がない場合は、テーブルクロスにそのまま置いて構いません。
NG行為6つ!
・パンをかじる → パンは一口大(親指の爪先から第一関節くらい)にちぎって食べる。
・バターをパンの全面に塗る → 一口大にちぎったパンの上に適量乗せる。
・パン屑を集める → ウェイターが綺麗にするので、一か所に集めたりパン皿の中に入れたりしないようにする。
・パン屑を払う → テーブルの下に払い落とすなんてもっての外!
・スープに浸す → スープが口に合わなかったという意味になる。
・おかわりしたパンを残す → 残さず食べるのがマナー。
コースの始まり「オードブル」
オードブルとは前菜を指します。
▼テリーヌやパテ
フォアグラやキャビアといった高級素材を使うことも多い、冷製オードブルの代表料理です。左端からナイフとフォークを使って食べていきます。
▼エスカルゴ
食用カタツムリのことをエスカルゴといい、エスカルゴバターと呼ばれるソースと絡めるのが一般的です。殻が熱いまま供される場合はエスカルゴトングが出てくるので、左手で持って殻を挟み、右手で持ったエスカルゴフォークで身を取り出します。殻が熱くなければ、トングを使わず手で押さえてもかまいません。
▼カナッペ
食パンやバゲットなどにチーズや肉、キャビアといった、あまり水分の無い食材を乗せた料理で、そのまま手でつまんで食べます。
▼殻付きのカキ
左手で殻を押さえ、右手でフォークを持って貝柱部分を切ります。身と殻を切り離してから、かける人はレモンを絞りましょう。絞るときは、周りに汁が飛び散らないように左手で覆うとエレガントです。
キスするように飲む「スープ」
スープには温製と冷製、ポタージュとコンソメと種類がありますが、飲み方は変わりません。また、ジュレと呼ばれるコンソメスープなどをコラーゲンで固めた煮こごりのようなタイプのスープもあります。
スプーンを右手に持ち、左手は器に添えて皿の奥から手前へとすくいます。このときスープは9分目を目安に入れると、口に入れるまでにこぼれず美しく飲めますが、気になる場合はすくってから一度、スプーンの底面を水面に付けると滴らなくなります。
また、スープの量が少なくなって掬いづらくなってきたら、皿の奥側を浮かせるように傾けると掬いやすくなります。とはいえ、残り僅かなスープをかき集めてまで飲むのははしたないと思われるので、ある程度食べたら終わりにしましょう。
スープを飲むときはすすらず、スプーンの先とキスをするように口を付けましょう。スープを「飲む」のではなく「流し込む」「食べる」と意識すると食べやすくなります。飲み終わったら、受け皿に掬う方を上側にして置きます。
絶対NG!
・音を立てて食べる → 最悪な食べ方
・パンを浸して食べる → スープが口に合わないと捉えられる
・熱いからと息を吹いて冷ます → がっついているように見えてしまう
スープが熱い場合はスプーンでかき混ぜるなどして冷やしましょう。
フィッシュスプーンも怖くない「魚料理」
これは肉料理にも通じることですが、ナイフとフォークで一度に切るのではなく、料理の左側から順に一口大に切って食べるのが美しいマナーです。
大抵の魚料理は頭や太い骨が外されて食べやすくなっていますが、丸ごと出てくることもあります。
魚が丸ごと出てきた場合
1.身(頭)をフォークで軽く押さえて、背骨に沿ってナイフを入れる。
2.手前の上身を骨から外し、左端から一口大に切って食べる。
3.皮が嫌なら、三枚おろしの要領で剥がすと良い。剥がしたら皿の奥側(手前の反対側)に置く。
4.手前の上身を食べ終わったら奥側の身を手前に持ってきて同様に食べる。
5.表面の身を食べ終わったら骨の下にナイフを入れて、頭と一緒に奥の方へ置き、下側の身を食べる。
見苦しくないように、取り除いた骨や皮を皿の奥へ一か所にまとめて置いておきましょう。
ソーススプーンが付いている場合は右手でソーススプーンを持ち、スープと同じ要領でソースを掬って飲みます。料理の周りにソースが描かれている場合は、手前から奥に向かって順々に魚に付けて食べていきます。また、魚料理にはフィッシュスプーンが付いていることがありますので、使い方をご紹介します。
フィッシュスプーンの使い方
1.右手にフィッシュスプーンを持ち、左手で持ったフォークで魚を押さえる。
2.フィッシュスプーンで魚を切り、掬うように身とソースを乗せてそのまま食べる。
フィッシュスプーンの片側に入っている切れ込みは、昔ナイフだった名残なので気にしなくても大丈夫!
お口直しに「ソルベ」
魚料理と肉料理の間にあり、口直しの意味を持つソルベ(シャーベット)。用意されているスプーンを使って食べますが、テーブルマナーで厳禁の「音を立てて食べる」ことをしなければ特に問題ありません。
メインディッシュ「肉料理」
肉料理も、魚やオードブルと同様に最初に全てを切り分けるのではなく、左端から一口大に切って食べていきます。しかし、串焼きなど調理の仕方によってはどう食べるべきか悩みますよね。食べ方に悩む肉料理2種類と、意外とどう食べるか戸惑う付け合わせの野菜の頂き方をご紹介します。
串焼き(ブロシェット)の食べ方
1.左手で串を持ち、右手のフォークで肉や野菜を全て外していく。串が熱い場合はナプキンを使う。
2.抜いた串は皿の向こう側(奥側)に置き、具を一口大に切って食べる。
串が熱いからと冷めるのを待つと、肉が抜けにくくなるので素直にナプキンを使って取りましょう。
骨付き肉の食べ方
1.皿の中で切りやすい位置に肉を移動させる。
2.フォークで骨を押さえながら、肉との境界にナイフを入れる。
3.肉から切り離した骨は、皿の奥に置いておく。
4.脂身と赤味を交互に食べる。
5.最後に骨に残った肉を食べる。このとき、素手で掴んで食べてよい。
6.食べ終わったらフィンガーボウルで、使った親指・人差し指・中指を片手ずつ一斉に洗い、ナプキンで拭く。フィンガーボウルがなければ、ウェイターに頼むと持ってきてくれます。
肉や魚と格闘するうちに肘が上がってしまうことがあるので、しっかり脇を締めましょう。
付け合わせの食べ方
1.一口で食べられなさそうなら、一口大に切ってから食べる。
2.アスパラなどのフォークで刺しにくいものは、くぼんだ面で掬って食べると良い。落ちそうなときは、ナイフで整えながら食べると良い。
3.グリーンピースといった小さくて転がりやすい付け合わせは、フォークの背で軽く潰してから、フォークのくぼんだ面に乗せて食べる。
肉と野菜はバランスよく、交互に食べるのが望ましいです。
魚料理と違い、肉料理では後からソースが出てくることがあるので、出てきたからとスグに手を付けないようにしましょう。後からソースが出てきた場合は自分でかけることになります。とろみのある濃いソースは皿の片隅に、さらりとしたソースは料理全体に掛けます。また、肉料理に限らず魚料理にも言えることですが、ソースをパンに付けて食べてもマナー違反ではありません。ただし、歴史が古く格式高いレストランや改まった場では避けた方が無難です。
口も胃もさっぱり「サラダ」
メイン料理が終わった後に出されることもありますが、肉料理と共に供されることもあります。どちらにせよ食べ方は変わりませんのでご安心ください。
サラダを食べるときはフォークを右手に持ち、ボウル(皿)に左手を添えます。改まった場でなければ左手を器に添えなくてもかまいません。
レタスやキャベツといった大きな葉物は、ナイフとフォークで一口大に畳んでからフォークに刺して食べます。大きいからといって切るのは、音が立ちやすいので止めてください。
繋ぎのチーズ
食事とデザートを繋ぐのがチーズです。ウェイターがチーズを何種類か持ってきますが、お腹に余裕がなければ断ってもかまいません。余裕があれば、その中から2~3種類を選びます。チーズに詳しくなければワイン同様、お店の人に好み等を伝えると上手く選んでくれるでしょう。
チーズの種類
・フレッシュ:ほとんど熟成させないタイプのチーズ。代表的なのはクリームチーズやモッツァレラ、ブリアサヴァランなど。
・白カビ:表面が白カビで覆われているタイプのチーズ。代表的なのはカマンベールやブリ・ド・モー、バラカなど。
・青カビ:ブルーチーズとも呼ばれる青カビを使って作るチーズ。代表的なのはゴルゴンゾーラやロックフォール、スティルトンなど。
・ウォッシュ:表面を塩水や酒で洗いながら熟成させたチーズ。代表的なのはエポワスやタレッジオ、マンステルなど。
・シェーブル:ヤギの乳で作ったチーズ。代表的なのはヴァランセやセル・シュール・シェール、クロタンなど。
・セミハード:比較的固いチーズ。代表的なのはゴーダやサムソー、プロボローネなど。
・ハード:固く重量のあるチーズ。代表的なのはチェダーやラクレット、ミモレットなど。
フレッシュや白カビは比較的クセがなく、チーズ初心者にもおすすめです。青カビやシェーブルはクセが強く、ウォッシュタイプは香りが強いので、チーズに食べなれた方にお勧めします。
チーズは、チーズ用ナイフとフォークが添えられていることが多いので、それで小さく切るか、クラッカーかパンに乗せるかして食べます。
第一のデザート「アントルメ」
アントルメとは、ケーキやアイスクリームといった温冷にかかわらず生菓子を指します。数種類の菓子が盛られている場合は、冷菓や味のマイルドなものから口を付けます。チョコレートや飴細工などで飾り付けられている場合は本体と一緒に食べるのが基本ですが、大きい場合は取り外してナイフとフォークで切って食べてください。
デザートワゴンがテーブルまで来るお店もあります。その場合も食べ方は変わりませんが、自分が食べられる分だけ選びましょう。欲張って選んで残してしまっては、エレガントとは言えません。
第二のデザート「果物」
アントルメの後に出てくる場合もありますが、盛り合わせになって供されることもあります。多くは食べやすいように皮や種が取り除かれていますが、果物によっては取り除かれないまま出されていることもあります。
皮付きメロンの食べ方
1.フォークでメロンの左側を押さえ、右側からナイフで皮に沿って全体の3分の2まで切れ込みを入れる。
2.切れ込みが入っている方が左に来るようにメロンの向きを変えて、一口大に切って食べる。
3.切れ込みが入ってないところまで食べたら、残りの果肉を皮から切り離す。皮は皿の奥に置いておく。
種のある果物の食べ方
1.そのまま食べる。ブドウのように皮が付いている果物は花びらのように上半分を剥き、下半分を押して果肉を押し出して食べる。
2.口の中に残った種は、口元を手で隠しながらもう片方の手でつまみ出す。
3.剥いた皮や種は皿の奥の方に置いておき、汚れた指はフィンガーボウルで洗う。
ゆったりした時間「最後の一杯」
コースの締めくくりは一杯の飲み物で終わります。コーヒーや紅茶、食後酒など飲み物の希望を訊かれるので、好きなものを選びましょう。
紅茶にスライスレモンが入っている場合は、専用の皿か、なければソーサーの奥側(カップを挟んで向こう側)に出しましょう。
紅茶・コーヒーの飲み方
1.まずは色、香りを楽しむ。
2.砂糖を使う場合は、角砂糖をトングで取り、ティースプーンに乗せてからスプーンごと紅茶の中に沈める。ミルクを入れる場合は飛び散らないように気を付けて。
3.砂糖やミルクを入れたり、熱くて飲めなかったりする場合は飲む前にかき混ぜるが、カップの底にスプーンを付けたまま回さない。混ぜるときは、手首を使ってスプーンを回さず前後に動かすと良く混ざる。
4.使い終わったスプーンは、ソーサーの奥側(カップを挟んで向こう側)に置く。
フレンチの食べ方が美しいと魅力的
マナーを守るということは「相手を不快にさせず、料理に関わる人々に感謝をする」ということです。洗練された所作でマナーを守って食べている人は、誰の目に見ても上品で魅力的に見えますが、行儀よく食べようとしてガチガチに緊張したまま食べるのはあまりエレガントではありません。やはり、マナーを守るにしても心に余裕を持つと、素敵に見えます。
和食やイタリアンはもちろん、特にフレンチは食事と共に会話を楽しむのもポイントですので「絶対マナーを守らなきゃ」と固く考えず、料理を美味しく楽しく食べましょう!