ドイツの食事マナー
テーブルマナーというと、イギリス式とフランス式が定番スタイルとして馴染があると思いますが、もちろん、ドイツにも食事中に守りたいエチケットがあります。
ここに紹介するドイツの食事マナーは、高級レストランだけではなく、ドイツの一般家庭の日常生活の中で適用されている、ごく基本的なルールです。
意外に知られていないドイツの食事の仕方とテーブルマナー。これからドイツに行かれる予定がある方にとっては有効な情報ですので、この機会にマスターしましょう。
ドイツ人にはショックなフランス式の朝食
ドイツ人が、フランスでショックを受けるのが朝食です。
フランスでは朝食のパンやクロワッサンなどをお皿にとらないで、直接、手にとって食べるか、せいぜい紙ナプキンに取って直接頬張るカジュアルなスタイルが普通です。
確かに、フランスでは「プチ・デジョネ(小さな昼食)」と呼ばれているぐらいで、朝食はあまり重要な位置にありませんので、わざわざお皿に載せて食べません。
しかし、ドイツ人は朝食をとても大切に考える国民です。
しばらくの間、実際に現地でドイツの食生活に触れてきましたが、その種類と量の多さはイギリスにも勝るのではないかと感じました。
ドイツの朝食には、フランス風のデザート皿のような小皿が必要です。
まず、パンを載せますが、ほとんどは「英国風のトースト」や「スウェーデンの黒パン」のようなスライスしたパンにソーセージ、ハム、チーズなどを載せて食べます。
もちろんナイフとフォークを使って食べます。朝食用の小皿をドイツでは、まさにそのまま「朝食用皿」と呼んでいて、ナイフとフォークと共に朝食には不可欠な道具なのです。
ドイツ人の食事の摂り方
ドイツではスープをプレート(皿)ではなく、大抵、小さなスープボウル(鉢)を使います。日本のお茶碗より、一回りくらい大きいサイズです。
サラダは、ほとんどメインディッシュと共に食べます。
小さめのお皿か小鉢に入れて出されるか、メインディッシュのお皿に一緒に添えられます。
前菜、メイン、チーズ、デザートというように、フランスでは食事コースの中でもチーズは重要な位置を占めていますが、ドイツでは食事中にチーズは食べません。
ドイツでは、主に軽食、果物、ビールのおつまみという感覚でチーズを頂きます。
デザートはケーキ類よりもフルーツやヨーグルトのようなクリームの類いのものが多く、これも小鉢に入れて出されます。
水道水はNG!飲料水のマナー
ドイツのレストランでは、日本のように水が無料で提供されることはありません。
オーダーの際に「飲み物は何にするか?」と尋ねられます。その際に、ドイツでは食事と共に飲むのは、ほとんどスパークリングウォーター(炭酸水)です。
炭酸ガス抜きの水を飲みたいときは、その旨をウエィターに伝えて下さい。
ドイツでは、決して、水道水を招待客に出すことはありません。水道水を出すのはとても無礼なことで、相手に対する屈辱にもなりますので、招く側になったときは気を付けましょう。
ナプキンのマナー
ドイツの高級レストランでは布ナプキンが用意されていて、汚れた部分が見えないように口元を拭く側を上にして二つ折りにして膝に置くなど、一般的な洋食マナーの使い方で問題ありません。
ドイツでは高級レストラン以外のほとんどの店では、紙ナプキンを使います。
大抵、飾りとしてお皿の上に載せてあるので、布ナプキンと同様にふき取った汚れが見えないように配慮しながら使います。
いずれも、ナプキンは膝の上に置きます。首からぶら下げるのはNG。
ドイツ特有の食事マナー
基本的に一般的な洋食マナーとほぼ変わりませんが、ドイツでは、次の点が他の欧州諸国に比べて違います。
食事をする者が全員、ちゃんと着席するのを待ってから食事がはじまる。
招待客全員が着席するのを確認したホストが、食事のスタートサインを送る。
上記2つのマナーは、どの食事の段階でも当てはまります。
例えば、デザートの時点ならば、全員がデザートを食べる準備ができるのを待って、スタートの合図を受けてから一斉にみんなでデザートを食べます。
また、たとえ社員食堂でも、同僚を待ってから食べ始めます。どうしても時間通りに食事に参加できない都合がある場合は、その旨を事前に知らせて「先に食べていて下さい」と伝えるのもマナーです。
もう一つドイツで独特なのは、パンをスープやコーヒーなどに浸して食べるのはよくありません。
フランスでは、コーヒーやカフェ・オ・レにパンやクロワッサンを浸して食べるのが当たり前ですが、ドイツではショックな出来事なのです。
スープを直接スープ皿に口をつけて飲むのもいけません。必ず、スプーンを使用するのがドイツの食事マナー。
ドイツ人の主食ともいえるジャガイモは、もちろん毎日のように食べますが、ジャガイモをナイフで切って食べることはマナー違反です。フォークの背で潰すようにして食べます。
これは、後でナイフにこびりついたジャガイモのでんぷん質を洗い落すのが面倒なため、ナイフを使わずフォークを使ってジャガイモをつぶす習慣がついたものと言われています。
ドイツのレストランで守るべきマナー
- 携帯電話は、マナーモードにする
- 招待した側が先に上着を脱ぐ
- 肘をテーブルにつくのはもちろん禁物ですが、両手を膝の上に隠すのもよくありません
上記の基本マナー以外に、旅行などでドイツに滞在中にレストランで食事する際に役立つ食事マナーを紹介します。
ドイツのレストランで食事を注文するときは、何よりも先に飲み物を注文します。但し、コーヒー以外に限ります。
というのも、朝食時以外では「コーヒーは食後に飲むもの」と決まっているからです。
ドイツのレストランで注文したい飲み物
・ビール
・ワイン
・炭酸水
・水
・ジュース
とりあえず、オーダーした飲み物が運ばれてきたタイミングで食事を注文します。
もちろん、最初から注文する食事が決まっているなら、飲み物と一緒に注文してもマナー違反ではありません。
ドイツ人と待ち合わせをするときは「時間厳守」です。時間を守ることが当然とされている、日本の感覚でいれば問題ありません。
時の流れに大らかなラテン系の国とは反対に、約束時間よりも少し早めに赴く方が好感を持たれます。
但し、5分以上も早く到着するのは嫌がられます。どちらにしても、遅れるのは禁物。
ドイツといえばビールですが、乾杯の際、必ず「プロスト!(健康を祈って!)」と言って相手の目を見つめるのがマナーです。
ドイツ人は会話中に相手の目を逸らすことを失礼と受け取り嫌がります。
食事に招待されてお礼に花束を贈る際は、お葬式のシンボルのユリ、カーネーションは避けましょう。
注文した食事はすべて食べ切るのがドイツの食事マナーですが、日本よりも一品あたりの量が多いので食べきれない場合は残しても構いません。
しかし、一応、すべての料理に口をつけるのが礼儀。
アルコールはホストが勧めない限り控えるのが基本。
ドイツは名産のビール消費量も多い国ですが、ドイツ人はお酒に溺れるほど飲むことを嫌がります。
お酒の飲み方で人格を疑われることさえありますので、旅行中などドイツに滞在中やドイツ人の知人友人とお酒を飲む機会がある場合、アルコールに弱い人は肝に銘じておきましょう。
前項にも書きましたが、全員が揃ってから食べ始め、食べ終わりも全員が食べ終わったら、ナイフとフォークをお皿の上に平行に縦に並べて置き、「ご馳走様サイン」を送ります。
ドイツのレストランでは、支払いはテーブルで行います。
担当のテーブル係りに支払いのサインを送ると、請求書をテーブルまで持ってきてくれます。
義務ではありませんが、ドイツではチップを出すのが一般的です。
チップの相場は約5~10%。特にサービスに満足した時は、少し多めに出すのがスマートなマナーです。
レストランで役立つ簡単なドイツ語
具体的な表現や文法がわからなくても、短い言葉と表情で相手に気持ちを伝えられる簡単なドイツ語を紹介します。
あまり発音は気にせずに、そのままカタカナをシンプルに読むだけでも伝わります。
レストランで使える簡単なドイツ語
・ありがとう
→ダンケ(Danke)
・おいしい
→レッカー(Lecker)
・お会計お願いします
→ツァーレン・ビッテ(Zahlen bitte)
チップを渡したい時に便利なドイツ語
・おつりは不要です
→シュティムト・ゾー(Stimmt so)
※チップを渡したいときに便利な言い方
※合計金額が28.5ユーロの場合、30ユーロを渡して「シュティムト・ゾー」と言えば、残りはチップだとスタッフは喜んで受け取る
テーブルの上にあるブレッツェルは食べてもいいの?
時々、ドイツのレストランのテーブルの上には8の字形のブレッツェルが置かれているのですが、自由に食べて構いません。
但し、イタリアのレストランによくある細長いおつまみパン「グリッシーニ」は無料ですが、ドイツでは有料なのでご注意ください。
厳しいルールの裏には配慮がある
食事マナーのドイツ編を紹介しましたが、「全員が揃ってから食べる」「遅刻厳禁」など、欧州の中でも厳格なイメージは日本と共通する点がありますが、理由もなく「厳しい」のではなく、一緒に食事する人や招いた客への心遣いが反映されている点が興味深いです。
また、欧州諸国どこでも、「音を立てない」「肘をつかない」「レディーファースト」の3点は共通マナーなのでドイツ国内やドイツ人と食事する際も忘れずに!