夏におすすめホラー小説・怖いのにページをめくっちゃう!

アンケートで寄せられたおすすめホラー小説を読めば、今年の夏も涼しく過ごせるでしょう。幽霊や怪物が出る心霊ホラーだけでなく、人間の狂気や残忍さを描いた恐怖小説など、様々な怖さを集めてみました。

おすすめホラー小説で涼しく過ごす

ホラー小説は1年を通して面白く読める物ですが、特にうだるような暑さが続く夏にはピッタリの作品です。「オススメの背筋も凍るようなホラー小説」を、アンケートした結果をまとめてみました。

ネタバレ無しであらすじと共に作品を紹介しますので、この夏は恐怖小説を楽しんでみてはいかがでしょう?

映画化もされた『リング』

呪われたビデオを見た者は1週間後に呪い殺される…。不用意にもビデオを観てしまった主人公は、果たして呪いから逃れられるのだろうか?

『リング』は鈴木光司による1991年に出版された小説です。1998年の同名映画の方がインパクトは抜群です。実際、TV画面からゆっくりと這い出てくる貞子は有名で、静かに迫りくる描写に戦慄しますが、そんな映画とはまた違った魅力があるのが、小説『リング』です。

本作はホラー要素がありつつも、「なぜ呪いのビデオが出来てしまったのか?」「どうすれば呪いが解けるのか?」というミステリー要素もあり、怖いだけではないので恐怖小説が苦手な方にもオススメです。

静かに迫る恐怖

「リング」そのビデオを見たものは1週間以内に死ぬという呪いのビデオを題材とした物語。

何といっても映画化された時の貞子の印象が強く、小説を読みながらも、その映像が頭の中でリンクされるのです。静かに迫りくる恐怖の描写が強すぎます。(40代/男性)

得体のしれない恐怖『残穢』

少女向けにホラー小説を書いていた小説家の「私」が、かつての読者から寄せられた怖い話の相談を受ける。興味を惹かれた「私」は、何が原因なのかを調べ始めるが……。

小野不由美による、ノンフィクション風ホラー小説が『残穢(ざんえ)』です。タイトルの通り、その土地に「残」ってしまった「穢」れの原因を追うお話です。ノンフィクション風に書かれているため、本当に「穢れ」が存在しているような気がしてきます。

普通の心霊ホラーとは違い、「祓ったら終わり」「無念を晴らしたら終わり」というものではありません。もっと古くからある、根源的な恐怖が読者にじわじわと迫り、夏の湿気を含んだ暑さのようにまとわりついてきます。読み終わってもまだ話が終わっていないような、不安な気持ちになるでしょう。

身近にありそうな恐ろしさ

小野不由美 『残穢』がオススメです。作家である主人公が、ホラー小説を書くために読者から怖い話を募集したところ、30代の女性から「住んでいるマンションに何かいるような気がする」という手紙が来るところから始まります。

この物語は派手に化け物や幽霊が出てくる訳でも無く、ハッキリ言えば地味な話です。しかしだからこそ、じっとりとしたまとわりつくような恐ろしさがあります。

読み進めるうちに、いえ、読み終わるとなおさら、得体のしれない「穢れ」や「怪異」は自分の身の周りにもあるのではないか……?と空恐ろしい気分になります

『残穢』はノンフィクションのような書かれ方をしており、そこがより怖さを掻き立てていると思います。(20代/女性)

短編集としても『怪談のテープ起こし』

主人公である作家は、2人編集者と共に『怪談のテープ起こし』に収録する短編を載せる順番を打ち合わせしていた。その時、編集者の1人が掲載順は雑誌で発表した順にし、合間に自分が体験した気味の悪い話を入れることを提案した……。

三津田信三によるホラー短編集が『怪談のテープ起こし』になります。本作は小説誌『小説すばる』に掲載されていた短編6本と書下ろし4本がまとめられており、正に序章の通りに話が進んで行きます。

主人公の作家の名は三津田、本作の作者も三津田、そして2人の三津田の経歴もとても似ており、彼や編集者が体験したことは本当に起こったことなのかもしれない…という恐ろしさが拭いきれません。

1話1話どれもが恐ろしく、怖気立ちます。本作を読む際は、必ず日の高いうちに読みましょう。暗い夜に読んでしまったら、何かを、誰かの気配を感じたような…そんな気持ちになってしまいます。

布団に入り込んで読んでほしい

私がオススメするホラー小説は三津田信三さん作の怪談のテープ起こしという作品です。この小説は連作短編となっていて1つ1つの短編集としても楽しめる作品です。

タイトルの通り、人から聞いた怪談のテープ起こしをしていて、怪異が始まり出す話です。夏の清涼剤にピッタリです。是非、深夜にクーラーをかけながら布団に入り込んでビクビクしながら読んで欲しいです。(30代/男性)

もし何でも直せるなら…『玩具修理者』

喫茶店で会話する2人の男女。そのうち女性が思い出を話し始める。彼女が幼い頃、近所に住んでいた「玩具修理者(がんぐしゅうりしゃ)」は、頼めばどんなおもちゃでも直してくれる存在だった……。

『玩具修理者』は小林泰三の短編小説で、同名の短編集に収録されています。後味の悪い作品としても有名です。また、短編集に収録されている『酔歩する男』はまた違った恐ろしさが身に沁みます。

読み終えた後はただぼんやりとした恐怖感と、「一体何があれば自分は自分だと言えるのか?」そんな哲学的な問いを抱えることになるでしょう。また、玩具修理者の名前は「ようぐそうとほうとふ」と言い、クトゥルフ神話に登場する「ヨグ=ソトホース」から名付けられています。

後味の悪いホラー

『玩具修理者』がオススメ。おもちゃを修理する人は本来、独楽やゲームソフト、ラジコンなど、修理できる玩具を直す人のはず。

しかし子供しか知らないその「玩具修理者」は、直せないはずの物まで、なんでも直してくれる。後味の悪い恐ろしさがあります。(40代/男性)

どんよりとした不気味さ『闇に囁くもの』

始まりは、アメリカのニューイングランドの川でこの世の物とは思えない、異形の死体が発見されたことだった。素人民俗研究家の主人公は、「異形の正体を知っている」という老紳士と知り合い、文通を始めるようになるが……。

『闇に囁くもの』は、著者がH・P・ラヴクラフトのSFホラーです。彼が書いた作品にはSFホラーが多く、一連の流れを汲んでいるものは他の作家によって体系付けられて「クトゥルフ神話」と呼ばれています。気になる方は『ダゴン』や『ダンウィッチの怪』など、他の神話もどうぞ。

主人公との文通で「私は狙われている!」と書く老紳士は、目には見えない異形の者どもに精神的に追い詰められていきます。突飛なストーリーなのに、どこか気味の悪さが拭えません。背筋が凍るホラーではないかもしれませんが、正気度が削られていきます。

ホラーが苦手でも読みやすい

僕のオススメは『闇に囁くもの』です。ホラーよりもSF色が強いので、ホラーが苦手な人でも読みやすいでしょう。

前半は文通相手が追い詰められているので、どこか他人事のような気がしてきますが、後半は自分が渦中へ飛び込んでいきます。対岸の火事と済ませられない怖さがあります。(20代/男性)

それは追い詰める『IT-イット-』

アメリカのメイン州デリーで、連続子供失踪事件が発生する。主人公は、事件現場近くで古い写真を発見し、幼少期に「IT」と呼んでいたピエロの仕業だと確信する……。

モダンホラーの名手、スティーブン・キングによるホラー小説が『IT』です。1990年に映画化されており、不気味で現実離れしたピエロが衝撃的で、公開後はピエロ自体を怖がる人も出てくるほどでした。

2017年現在、映画のリメイク版も公開予定で、原作が出版されてから30年以上経った今でも人気の高い作品となっています。

良い意味でトラウマになる作品

スティーブン・キングのITです。文庫で1~4巻で完結です。ホラー小説の代表作で、ピエロが登場するホラー作品ですが、ピエロブームの原点と言っても過言ではないでしょう。

過去に映画化もされていますが、原作は事細かな内容で記されていて恐怖が増していて、かなり面白いのでチェックして頂きたいです。良い意味でトラウマになること間違いありません。(20代/女性)

小説家の恐怖『ミザリー』

『ミザリー』シリーズで有名な主人公の作家は、シリーズを終わらせて新たな作品に取り掛かっていた。新作の原稿を手に車を走らせていたが、事故を起こし重傷を負ってしまう。運よく、通りかかった元看護士に救出されるが……。

『ミザリー』も『IT-イット-』同様、スティーブン・キングによる作品です。本作は『IT』よりも現実的なストーリーになっており、現実離れした存在や超能力の類は出てきません。しかし、それでも恐ろしさは折り紙付きです。

初めは普通の人に見えても、内側には狂気を秘めているかもしれない…いや、本当は誰しも狂気の片鱗を持ち合わせているのかもしれない…と恐ろしくなります。冷静に狂気に陥っている人の怖さ、一度読んでみてはいかがでしょうか。

追い詰められる怖さ

スティーブン・キングのミザリーです。少し古い小説ですが、読み進めていくうちに、どんどん追い詰められていく主人公の気持ちが伝わってきて、あちこち体に痛みが走るような感覚に襲われます。(30代/女性)

遺伝子の中の反乱者『パラサイト・イヴ』

主人公は、不慮の事故で亡くなってしまった妻の死を受け入れられず、彼女の細胞を培養し始める。Eve1と名付けられた細胞は、みるみる内に増殖し未知の生命体へと変化していく……。

瀬名秀明のデビュー作である『パラサイト・イヴ』は、SFホラー小説です。細胞、遺伝子という、生物であれば誰しもが持つものが、実は何ものかにパラサイト(寄生)されていたら…?という物語です。

遺伝子という生活している中では目に見えない存在が、人間に対して反乱を起こしたらという、自分ではどうしようもできない恐ろしさがあります。謎の遺伝子イヴとヒト、果たしてどちらが生き残るのでしょうか。

遺伝子の反乱

「パラサイト・イヴ」はミトコンドリア遺伝子の反乱を描いた小説で、なんとなく身近にありつつも、あまり馴染みのなかった生物学が怖い存在になります。

私たちは何かに操られているのではないかという根源的な恐怖がテーマになっており、読んでいてゾッとします。(30代/男性)

幽霊より怖いのは…『黒い家』

主人公は保険会社の社員で、保険金の査定業務を担当している。ある日、呼び出された家へ赴くと、子供が首を吊って亡くなっていた。しかし、自殺よりも事件の疑いが濃いため、保険金の支払いを保留していたが……。

保険金殺人をテーマとした『黒い家』は、貴志祐介によるホラー小説です。漫画化され、国内外で映画化もされています。幽霊や怪物が出てこなくてもホラー小説として成り立っており、身近に起こりうる恐怖が何とも恐ろしい作品です。

また、実際に本作が発表された翌年に似た内容の事件が起こったのも、当時はフィクションとして片付けられないという事実が、恐ろしさに拍車をかけたでしょう。

リアルな怖さ

貴志祐介の『黒い家』です。ホラー小説だが幽霊が出てこない点に現実味を感じ、恐怖が増幅されます。

作者本人が以前生命保険業界で働いていた関係もあって、その細かな設定にリアルさがあります。

登場人物の心理描写、お互いのエゴがぶつかる感じは現代社会でも起こる人間の黒い一面だと感じずにはいられません。

自分の周りにも、自分の利益しか考えないような人がいるのではないかと恐ろしくなります。(30代/男性)

短編集『ぼっけえ、きょうてえ』

岡山の醜い女郎が、眠れないという客にねだられて身の上話を聞かせるが、それは恐ろしい物語の幕開けであった……。

岩井志麻子の短編小説で、同名の短編集の中の1話となっています。タイトルの「ぼっけえ、きょうてえ」とは、作品の舞台にもなった岡山の方言で「とても怖い」を意味します。短編集には『密告函』『あまぞわい』『依って件の如し』があり、そのどれもが人間の内にある残忍さや狂気を描いていて、それはそれはきょうてえ話ばかりです。

体験談にあるように映像化されましたが、アメリカでは残酷過ぎて放送中止になっています。ホラーだけでなく、グロテスク系にも耐性のある方はぜひ。

ぼっけえ、きょうてえ話

初めて私が知ったのは『マスターズ・オブ・ホラー』というアメリカのテレビシリーズでした。13人のホラー監督が撮った13本のホラー映画の中に『ぼっけえ、きょうてえ』があって、かなり強烈な印象を残しました。

原作も短いながらかなり怖いです。アメリカンホラーのようなカラッとした恐怖ではなく、じめじめとしたずっと残るような怖さに震えます。(20代/女性)

ホラー小説のオススメは夜

アンケートをとったところ、怪奇的な恐怖から生きた人間の恐ろしさと、様々な種類の怖さが集まりました。あなたの趣味に合うホラー小説はありましたでしょうか?

どれを読もうか迷っているのであれば、一冊で違う恐怖を味わえる短編集がオススメです。猛者はぜひ夜に読んでみましょう。まぁ、何が起きても責任は取れませんが…。