ビジネス敬語の正しい使い方を身に着ける基本講座

ビジネス敬語が正しく使えるように、丁寧語・謙譲語・尊敬語の違いから、ビジネスシーンでよくある間違い、電話での受け答え等、ビジネス敬語が必要な場面の対策を実用例も交えて紹介しています。

ビジネス敬語をマスターして美しい日本語を使いこなそう!

ビジネスで取引先や顧客対応をするときプライベートで目上の人と話すとき、敬語に自信が持てないと曖昧に会話を終わらせてしまう人もいます。

敬語の使い方に不安があると大事なシーンでも口数が少なくなり、チャンスを逃してしまいます。面と向かって話しているなら敬語の使い方を間違えていても、「ニュアンス」で判ってくれることもありますが、電話の場合は話している言葉や声色でしか判断できないので致命的になります。
仕事に使える「便利なツール」として敬語をマスターしておくとチャンスが広がります。

知っておきたい敬語の種類

敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語と分かれています。それぞれ場面にあった使い方があるので、しっかりと使い分けができるように予習しておきましょう。

尊敬語

相手の存在や動作、状態などを敬って使います。尊敬語はさらに下記のように3つに分かれています。

敬う気持ちを表すために接頭語を名詞につける言い方

「お名前・お気持ち・お考え・ご家庭・貴殿・御社」など、「お・御・ご・貴」を名詞の頭につけて敬う気持ちを込めます。

「ご(お)~になる」「~れる」「~られる」「~なさる」などを語尾につける言葉

「読む」 → 「読まれる」
「行く」 → 「行かれる」
「話す」 → 「話される」

この他に尊敬する気持ちを強く表す表現では、それ自体に敬う意味がある言葉、「なさる・おっしゃる・召し上がる・いらっしゃる・くださる」などを使って、その行動をする人に対して敬う気持ちを表しています。

「言われた」 → 「おっしゃった」
「食べられましたか」 → 「召し上がりましたか?」
「来られました」 → 「いらっしゃいました」

文例に「食べられましたか」という言葉をみてみましょう。
複数の解釈ができてしまうことがわかります。

「時間が無かったけれど昼食を食べられたのか?」(可能)
「昼食を食べたかどうか」(尊敬語)
問いかける意味の2種類です。

この質問をされた人は、どちらの意味で問いかけられたか戸惑ってしまいます。
忙しくて食事する時間がない状況を訪ねる場合
「食べましたか?」
食事を済ませたかどうかを訊ねる場合
「召し上がりましたか?」(尊敬語のレベルを上げた言い方)
この2つを使い分けると、意味の取り違えがなくなります。

状態に対して表現する

「お・ご+~になる」の組み合わせを使います。例えば、忙しい・美しい・書くなどの状態に対して、相手を立てる言い方で表現します。

「お忙しい」
「お美しい」
「お書きになる」

使ってはいけない例
元々の言葉がラフな言葉である場合は「お・ご+~になる」をつけられません。

「おくたばりになる」
「おふざけになる」
※「おふざけが過ぎます」という言い方はしますが、「お・ご+~になる」の使い方はできません。

また、変則で「お・ご」を使わない言葉もあります。

「失敗する」は
「ご失敗する」とは言わず
「失敗なさる」と言い換えます。

「車を運転する」は
「ご運転する」ではなく
「運転なさる」「運転される」と言います。

「見る」は「ご覧になる」
「寝る」は「お休みになる」など、
他にも言い換える言葉が数多くあります。 

謙譲語 その1

謙譲語の用法の1つ目は、敬う対象の相手に対して、自分がへりくだるときに使う言葉です。敬う対象の相手を「立てる」表現で尊敬する気持ちを表します。

「伺う」
「申し上げる」
「~いたします」
「いただく」
「差し上げる」など。

行動を謙譲語に変換すると、
「見せる」 → 「お目にかける、ご覧に入れる」
「持つ」 → 「お持ちする」
「会う」 → 「お目にかかる」
「知っている」 → 「存じ上げる」など
普段からよく使われる言葉です。

謙譲語 その2

謙譲語の用法の2つ目は、自分をへりくだって表現する言葉です。 謙譲語その1との違いは、敬う対象が無くても、自分の行動などをへりくだるときに使うところです。

主な使用例は
「○○へ参ります」
「申し上げます」
「~をいたします。」など。

また、へりくだる意味を表す「ども・弊・拝・愚」などの接頭語、接尾語をつけて使います。他にも「拙署」「小社」などがよく使われる謙譲語です。

丁寧語

「です」「ます」などを使う丁寧な言い方です。「です・ます」調を使うだけで、普通のビジネスシーンでも敬語として通用しますが、さらに丁寧な言い方に変換することもできます。用途に応じて使い分けると良いでしょう。

「訪ねる」 → 「訪ねます」 → 「伺います」 → 「参ります」
このように相手によって、より丁寧に変換していきます。

また「受付はあちらです」と「です」をつけて丁寧語で話しますが、より丁寧な言い方は「受付はあちらでございます」という言い方になります。
一方で丁寧語には相手を敬う表現は存在しないため、「○○さんでございますか?」を「○○さんでいらっしゃいますか?」の方がより敬意を表することができます。

美化語

ものごとを美化して高める敬語です

「飲み物」 → 「お飲み物」
のように「お」や「ご」を言葉の頭につけます。

「○○さんは、味噌汁を召し上がりますか」
「○○さんは、お味噌汁を召し上がりますか」
後者の方が敬語として完成しています。

しかし「おビール」「おトイレ」などは間違った用法で外来語には美化語をつけません。

美化語の変換例では
「水」 → 「お冷」
「腹」 → 「お腹」
など普段からなじみのある言葉が美化語として使われています。

クッション言葉を使ってシーン別で正しい敬語をマスターする

悪い例を読んでしまうと、頭の中にイメージとして残ってしまいます。
がついている文章はサラッと読み流して、
のついている文章を頭にインプットするイメージで」読んでください。

お詫びをする 

「ごめんなさい」
「すみません」
この2つはプライベートでのお詫び言葉で、ビジネスの場で使うには不適切です。相手にお詫びの気持ちが伝わらないだけではなく、軽く扱われていると思われてしまいます。

「申し訳ございません」
ごく一般的なお詫びの言葉でオールマイティに使えます。さらに「申し訳ございません」の前にお詫びをするクッション言葉を付け足すと、気持ちが伝わりやすくなります。

「お役に立てず、申し訳ございません」
「ご配慮いただきましたのに、申し訳ございません」

クッション言葉とは

敬語に付け加えるだけで印象を和らげる効果のあるスムーズに会話を進めるためのテクニックです。

色々なクッション言葉を使うメリット

・単調になりがちな敬語にバリエーションを持たせて会話が弾む。
・相手に内容が伝わりやすい。

相手に共感の気持ちを伝えたい

「その通りです」
「なるほどですね」
相手と対等な立場で話しているように受け取られる言葉で、敬語ではありません。

「ごもっともでございます。」
「おっしゃるとおりでございます。」
このように言われたら、共感してくれていることが伝わりますね。

承諾や理解したことを伝える

「わかりました」
「了解いたしました」
一見敬語のように思えますが、へりくだっておらず、相手を立ててもいない言葉なので敬語ではありません。社内で同僚に使うレベルの言葉です。

「かしこまりました」
「承りました」
「かしこまる」と言う言葉は目上の人に対して最大の敬意を払う態度を示します。

行動や気持ちの確認をする

「よろしかったでしょうか?」
これはコンビニ言葉と呼ばれる間違った日本語です。今の状態を確認しているのに過去形になってしまうのは変ですよね。

「お間違いございませんか?」
よく使われていて違和感が無い言葉に思えますが、相手に「間違ってないですか?」と訊ねるのは失礼にあたります。「間違ってないよ!」と反論されるケースも多いのです。

「よろしいでしょうか?」
「現在形+疑問文」が正解です。

相手のことを確認する

「○○さまのご主人ですか?」
「どちら様ですか?」
「どこの会社の人ですか?」
必要なことを確認しているだけですが、言われた方からすると失礼に感じる言い方です。

下記のようにクッション言葉を添えると、柔らかい言い回しになります。
「失礼ですが、○○様のご主人様でいらっしゃいますか。」
「失礼ですがどちら様でしょうか。」
「恐れ入りますが、どなた様でいらっしゃいますか。」
「恐れ入りますが、お名前をお伺いできますでしょうか」

取引先の人を確認する場合は名刺などもあり比較的確認しやすいですが、個人の本人確認は「個人情報保護法」が施行され、「本人確認が面倒」「当たり前のことを聞かないで」と不満に思っている人が多いです。

言い方を変えるだけでスムーズに会話が進むので、積極的にクッション言葉を取り入れるとワンランク上の応対ができます。

相手にお願いするとき

「○○してください」
この言い方では、一方的に上から言われているように思われてしまうため、クッション言葉を加えて柔らかくて丁寧な表現で話しましょう。

「恐れ入りますが○○していただけますか。」
「お手数をおかけいたしますが、ご連絡いただけたら幸いです。」
「よろしければ○○していただけますか。」

クッション言葉を付け加えるだけで、相手にお願いしたいことをスムーズに伝えられるだけではなく快く了承を得られます。

電話応対で使いたい話し言葉

「顔を見て接客するときにつかう言葉」と「電話でつかう話し言葉」は少し違います。電話では顔が見えない分、伝えたいことを「わかりやすく、且つ、失礼の無いように敬語で話す」必要があります。

悪い例 良い例
ご用は何でしょうか どのようなご用件でしょうか
来てください お越しいただけないでしょうか
できません いたしかねます
できかねます
わかりません わかりかねます
今いません ただいま席をはずしております
どうしますか いかがいたしましょうか
もう一度言います 復唱いたします
もう一度申し上げます
ちょっと待ってもらえますか 少々お待ちください
大丈夫ですか ご理解いただけましたでしょうか
電話の声が小さいです 少しお電話が遠いようです
私の声は聞こえておられますか
電話が聞こえないです
もしもし
音声が途切れて失礼いたしました
○○様、今は聞こえておられますか

このように電話応対でも場合に応じて適切に敬語を使うと、相手に伝わりやすく、なおかつ感じの良い対応をすることができます。

敬語は習うよりも慣れて取得しましょう

「敬語は難しい‥」と尻込みせず、どんどん使って慣れていくことが上達への道です。使いこなせるようになると、どのような場面でも落ち着いて意見を述べることができるようになります。

敬語のスキルを身に着けて華麗なビジネスウーマンを目指しましょう。