作家になるにはどうすれば良い?
作家とは、芸術の分野で創作をする人の総称ですが、ここでは執筆を生業とする文学系の作家になるための方法や必要とされるスキルや資質に関して述べていきます。
- 『作家になりたいけど、どうしたらイイの?』
- 『作家って儲かるの?』
- 『作家に向いている人って、どんな人?』
という疑問を持っている方、または将来、リアルに作家を目指している方は、参考にしてみてください。
『作家になるには?』と、方法を模索中の方に上記を紹介します。
作家としてデビューする方法
漠然と作家になりたいと思っていても、どうしたらデビューできるのか、わからない人も多いのではないでしょうか。ここでは、ごく一般的な作家への道をご紹介します。
1.文学賞の一般公募に作品を応募する
プロの作家になるには出版社の各文芸雑誌で行う新人賞などに応募するのが王道ですが、有名な作家の審査員に見てもらう前に、大学生のアルバイトが応募作品を「小説として読めるか」「ストーリーが確立しているか」「読みやすい文章か」などを基準に選別することもあるので、まず、そこを突破するのが必須です。
新人賞を受賞すれば、懸賞金の他、単行本も発行してもらえますし、新聞などでも紹介されるので、次の仕事の依頼が来る可能性も高くなり、作家になるには”もっとも正当な方法”でしょう。
主な日本の文芸雑誌としては、以下が「五大文芸誌」と呼ばれています。
- 「文學界」(文藝春秋)
- 「新潮」(新潮社)
- 「すばる」(集英社)
- 「群像」(講談社)
- 「文藝」(河出書房新社)
これらに掲載された短編小説や中編小説が芥川賞の候補になることが多く、新人賞も募集しているので、自分の作品傾向を考えて『どの文芸雑誌が合っているのか?』を確認しましょう。作家にとって出版社との相性は、とても大切です。
2.出版社に作品を持ちこむ
最近では「持ち込みお断り」の出版社もありますので、事前に調べてから連絡しましょう。また、どんな自信作であっても相手にしてみれば「ただの素人が書いた物」なので、『原稿を読んでください』と言っても、まともには取り合って貰えないことも少なくありません。
『○○賞の最終選考まで行った作品なのですが……』と言えるぐらいの実績があって、初めて出版社の人も『会ってみようかな…』『読んでみようかな…』と思うに至ります。やはり、作家になるために原稿を持ち込んで売り込む場合の登竜門は、賞などに応募して認めてもらうことなのです。
3.出版関係の知人に編集者を紹介してもらう
作家になるには、出版社に勤めている知人に文芸誌の編集者を紹介してもらうことも近道なのですが、自信作と言える”叩き台の作品”がなければ始まりません。
作家になるには、まずは書くことです。そして、作品を編集者に読んでもらってアドバイスをもらい、かなり辛辣な意見でも素直に受け入れて幾度も手を入れ直す作業を開始して下さい。根気が試される条件をクリアして、初めて土俵に上がれるという訳です。
多くの人が、この時点で挫折してしまいますが、プロに原稿を読んでもらえることは”チャンス”だと思って踏ん張って欲しいですね。
4.ホームページで作品を発表する
出版社の方がネットの作品にアンテナを張っていて、ヒット数の多い優秀な作品には『単行本化しないか?』と、話を持ちかけられることがあります。世の中に自分の作品を発表するには、一番、簡単な方法とも言えます。
ただし、当然ながらネットにアップすれば何でも良いという訳ではありません。ブログの延長や垂れ流し的な言葉の羅列ではなく、起承転結のあるストーリーや説得力のある文章で成り立っている作品に限るので、便利なツールを手にしたからといってハードルが低くなるとは言えません。
しかし、従来形ではない”新しい切口の作品”が発表されれば話題にもなるので、作家デビューできる可能性は大いにあります。
5.同人誌を作る
同じ小説家志望の仲間を募って”同人誌”を立ち上げます。作家は常に孤独な作業を続けているので、同じ志を持つ仲間に刺激を受けたり、作品を高め合うことができます。商業誌とは違って、同人誌は自分の書きたい作品を好きなように書ける自由さが魅力です。
ただし、収入には結びつきませんし、生活をするために他の仕事をしながら作品を書き続けて行くには苦労が伴います。創作への情熱やモチベーションを維持して行くには、『自分は作家である』『素晴らしい作品を書きたい』という強い信念が必要とされます。
6.自費出版をする
100万円単位のお金はかかりますが、逆に”お金さえ支払えば自分の書いた作品を本にしてくれる”ということです。最近では、「自分史」などを自費出版する方も増えていますが、出版元は、「作家」としてではなく、お金を支払ってくれる「お客さん」として接するので、厳しい編集者のチェックも入りません。
ネットで検索すれば、自費出版をしてくれる会社もすぐに見つかります。
7.他の分野から小説家に転向する
小説を書いていなくても、文筆業をしていれば出版社との繋がりができます。芸人であり芥川賞作家でもある又吉直樹(またよしなおき)氏は、メディアなどで読書好きを公言していたので、出版社の方から『読書の感想文のようなコラムを書いて欲しい』と依頼されたことが作家への第一歩でした。
林真理子(はやしまりこ)氏は、コピーライターからエッセイストになり、さらに1986年に「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞を受賞し、小説家としての地位を固めました。
テレビの脚本家である向田邦子(むこうだくにこ)氏は、短編の連作「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」で1980年に直木賞を受賞、また、野沢尚(のざわひさし)氏もドラマの脚本家として評価を受ける傍らミステリー小説も手掛け、1998年に「眠れる森」「結婚前夜」で向田邦子賞を受賞しています。
著名人は確かに一般の人と比べてコネクションを得やすいので、作家としてデビューする機会に恵まれているかも知れませんが、それまでに裏打ちされた実績があってのことですので、どの道に進むにしても人生は決して甘くはないということですね。
作品ジャンルと作家に求められるスキル
作家にも様々なジャンルがあり、恋愛小説を執筆するなら人間観察力が役立つように、各分野によって必要とされるスキルも違います。
小説家
多岐にわたる「小説のジャンル」ごとに解説します。
純文学
人間や自己を深く掘り下げて描く芸術性の高い作品で、芥川賞候補に成り得ます。又吉直樹(またよしなおき)氏の「火花」も芸人である主人公の心情を時には滑稽に時にはせつなく見事に描いています。
純文学に要求されるスキルは、なんと言って人間観察です。そして情景描写、心理描写、秀逸した文章力が必要とされます。
エンターテイメント
読者を楽しませることを目的とした娯楽性、大衆性の強い作品で、直木賞候補になる可能性があります。今、書店に並ぶ小説のほとんどがエンターテイメント作品ですが、ジャンルは多岐に別れています。
推理小説
ミステリー小説は、もっとも人気のある分野です。ページをめくりながら自分も主人公と一緒に犯人を探していく行程がワクワクするのでしょうね。緻密なトリックを考えだす発想力と完璧な構成力が必要とされます。
SF小説
いわゆる「空想科学小説」です。フィクションではありながら、科学的な根拠がなければ成立されないので理科系の頭脳も必要です。
たとえば「タイムスリップ」と文章では、ひとつの単語で済ませてしまいますが、その言葉の背後にはアインシュタインの相対性理論などを理解していなければ、描ききれないものもあります。空想の世界でありながら信憑性のあるストーリーにしなければ確立しません。
恋愛小説
多くの恋する男女の物語を紡ぐものなので、恋愛経験もさることながら、「さわやかな恋愛」「泥沼化した関係」「情熱的な恋」などを書き分ける能力が必要です。男女の愛憎劇を描くことは、人間の内面にまで深く入り込むことなので、人間観察力、シチュエーション設定や会話のセンスも重要です。
ハードボイルド小説
暴力的・反道徳的な内容に批判を加えずに、客観的な視点と簡潔な文体で記述したものを「ハードボイルド小説」と言います。感傷や恐怖の感情に流されない主人公をいかにストイックにカッコ良く描けるかによって、作品全体の重厚さが決まります。
社会派小説
社会性のある題材を扱って、読者に社会の矛盾点や問題点などを提示する作品も多くあります。リアリティを重んじるので、事件や事故そのものの背景や登場人物を丁寧に描ける取材力や観察力が必要です。
時代小説
過去の時代や人物、出来事などを題材に描いた作品。過去の時代背景の中でストーリーが展開していくので、時代考証や江戸時代など過去の時代の文化や生活の知識が重要です。
たとえば「天ぷらそば」を食べるシーンでも、いつの時代に「天ぷらそば」は店頭に並ぶようになったのか、天ぷらの具材はどんなものが使われていたのか……など詳しく調べた上でなければ、一歩も進めません。
池波正太郎(いけなみしょうたろう)氏の「鬼平犯科帳」、「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」、藤沢周平(ふじさわしゅうへい)氏の「蝉しぐれ」「たそがれ清兵衛」などが代表的ですね。
歴史小説
時代小説とは違い、歴史上の人物や実際に史実としてあった事件を扱った作品です。書き手は主人公とする人物の生き方や思想に読者が感動してくれるように、訴えたいメッセージを紡いでいきます。
時代小説と同じく時代考証も重要ですが、さらに主人公や登場人物に対しての評論的な文章も織り込まれるので、徹底的に主人公を掘り下げて描くことが必要です。資料の読み込みは絶対に必要なことで、少しでも史実と違うことを書けば時代考証家や歴史マニアからすぐにクレームが入ります。
歴史小説の典型的作品といえば、山岡荘八(やまおかそうはち)氏の「徳川家康」、丹羽文雄(にわふみお)氏の「親鸞」「蓮如」などでしょうか。
ホラー小説
恐怖をテーマにして、読者にいかに恐怖感を与えるかを目的とした作品ですね。読んでいて血も凍るような恐怖を読者に味わってもらうためには、緊迫した臨場感を描けるテクニックが必要です。
鈴木光司(すずきこうじ)氏の「リング」「らせん」は、怖かったですね…。
ノンフィクション作家
史実や記録に基づいたメッセージ性の強い作品をノンフィクションと言います。この場合、明確なテーマや読者に伝えたいコンセプトが重要です。
たとえば「東日本大震災の復興」をテーマにしたとき、実際に被災地に赴き、多くの被災者たちの生の声を聞き、「復興とは何か」という問題点を読者に投げかけることもあります。
多くの関係者と会ってインタビューをして記事にまとめため、多くの時間を費やし、辛抱強く真実を追究する忍耐力と交渉能力が必要です。
童話作家・児童文学作家
童話作家に必要なことは、子どもたちの心を掴みとる文章を書けること、子どもと同じ目線に戻れることです。豊かな感受性を持ち、子供たちが、どんなことに怯え傷つき、こだわり、どんなときに号泣したり感激したりするのかを、頭ではなく肌で感じられることが大切です。
童話作家や児童文学作家の仕事は、単に面白い物語を子どもたちに提供するだけでなく、子供の精神的成長を助ける大きな役割を担うことになります。
その他ジャンルの作家
一応、おおまかにジャンル別に作品を書くにあたって必要なスキルをご紹介してきましたが、まだ他にも「俳人・詩人・歌人」のジャンルや「シナリオライター・漫画の原作者」「エッセイスト・コラムニスト」などの分野もあります。
ジャンルを飛び越えて活躍している作家も多く、宮部みゆき(みやべみゆき)氏は、ミステリー作家としてデビューしましたが、その後、時代小説「本所ふしぎ草子」「ぼんくら」その他、ファンタジー小説「ブレイブストーリー」、ゲーム小説「ICO」など幅広い分野で活躍しています。
最近、映画化された「ソロモンの偽証」の三部作は社会推理小説の分野では、原稿用紙4700枚の超大作として話題になっています。尊敬に値する体力と気力です。
作品を書く方法
さて、実際に作品づくりに取り組む際のポイントを紹介します。
ふた通りの創作方法がある
1)描きたいテーマによって必要な知識を仕入れていく。
ストーリー展開や登場人物を動かすには、それなりの知識が必要です。
たとえば【コンビニでアルバイトしている大学生の主人公は、銀行員の父親に反発して家を出て一人暮らしをしている】というプロットがあれば、コンビニ店員の仕事や金融業の仕組み、またアパートを借りるときには不動産屋の仕事や賃貸契約の方法なども知らなくてはリアリティのない薄っぺらな作品になってしまいます。
でも、作品の中に『自分は、これだけ調べましたよ!』みたいな文章は不要なのです。たった1行の文章の中にでも確かな裏打ちをする努力のあとは、読者からは見えないに限ります。
2)自分の専門知識を利用する
「下町ロケット」「半沢直樹シリーズ」の作者、池井戸潤(いけいどじゅん)氏は、銀行員時代の知識を作品に活かしていますし、「明日の記憶」などの作者、萩原浩(はぎわらひろし)氏は広告代理店に勤めていた経験を活かした作品を多く発表しています。
一般の人が知らない”業界の細かい裏事情などを作品に織り込む”ことによって、作品に厚みが出ます。
執筆のポイント
◆ 読者に何を伝えたいのかを明確にする
起承転結のストーリー作りも大切ですが、読者から『面白く読めたけれど、後には何も残らなかった』と言われないように、テーマやコンセプトという核を地盤に”構成という骨組み”を作り、そこから登場人物を設定してストーリーを展開させていくことが大切です。
思いつきや感性で書き始めても、地盤が定まっていないと必ず行き詰ります。
◆ 取材は面倒がらずに小まめに動く
情景描写にリアリティを持たせるためにも、舞台となる場所にはできるだけ足を運んで、その土地の景観や空気や匂いなどを肌で感じ取りましょう。取材を重ねて行くことによってテーマが膨らむこともありますし、コンセプトも変わって行くこともあるので欠かせない大切な作業です。
『この街をリアルに描きたい』と『この素晴らしい景観を文章で読者に伝えたい』という想いが作品の質を高めてくれるのです。
◆ 語彙を増やし感性を養う訓練をする
ボキャブラリーに乏しい人は伝え方に限界があります。書物だけではなく、映画や音楽にも触れて美術館や博物館を巡り、見たもの、聞いたものを言葉で表す癖をつけましょう。
また、生活の中には”ステキな言葉”がたくさん隠れているので、自分なりの表現を作り出す工夫や努力が必要です。
◆ 登場人物に息を吹き込む
登場人物の外見や年齢、職業、家庭環境、履歴などを決めて、どういう行動をして、どういう喋り方をするかを想定していくことを”キャラ設定”と言います。
『これらの登場人物を全部引き連れてディズニーランドに行くシミュレーションをしましょうよ』と、ある編集者に言われたことがありました。
バカバカしい話ですが、誰が、どんなアトラクションを選び、どんな食事をして、どんな反応をするのかを編集者とシミュレーションしていくことによって、それぞれのキャラが立ってきて台詞も生きて来るのです。
主要な登場人物の一人一人の履歴書を書く方法もおすすめです。これまで生きてきた背景を設定していない登場人物は、ただ作者に操られているマリオネットに過ぎません。でも、息を吹き込んであげればキャラが勝手に動いて勝手に喋ってくれるようになるのです。
作家の収入は?
作家を目指している人にとって、一番、気になるのは収入面でしょうが、ハッキリ言って作家業で高額収入者になれる人は、いわゆる”ベストセラー作家”と言われる極僅かな人たちだけで、経済的に苦しい作家がほとんどです。
プロの作家の平均年収は200万~400万なので、決して裕福とは言えないのが現実です。
原稿料
平均的な原稿料の基準は、ペラ(400字詰原稿用紙1枚)で2,500円~5,000円ぐらいです。ペラ3万円以上の作家もいますが、紙媒体が衰退してネットに移行してからは原稿料の値上がりが足止めになっているのが実情です。
文芸雑誌で月連載を持っている作家、新聞などに小説を掲載している作家は決まった収入がありますが、出版社から依頼があって長編小説を書いている作家でも、実際に原稿を仕上げるまでは無収入ということもあります。
また、原稿料には源泉徴収があり税金として約10%が引かれるため、ペラ5,000円の作家が10枚の原稿を書いたとしたら、50,000円ですが、実際に支払われる金額は45,000円となります。
確定申告でいくらかは戻ってきますが、スズメの涙ほどです。
単行本の印税
- 実売方式
- 発行部数方式
作家と出版社の間で交わされる印税の契約には上記の2種類があります。「実売方式」は、その名のとおり”売れた冊数分の印税”が支払われ、「発行部数方式」は”本が発行された冊数分の印税”です。
作品が単行本化されると、だいたい本の定価の8%~10%の印税が作家に入ります。
「印税率10%、発行部数方式」で計算すると…、定価1500円の単行本に対して一冊につき150円の印税となるため、初版で1,000部発行されたら”印税収入は15万円”ということになります。
版を重ねる作品は文庫本にもなるので更に印税が発生するのですが、ほとんどの場合は初版で終わることが多いので、ひとつの作品で長く、多く収入を得るのは至難の技。
因みに、2015年に芥川賞を受賞した又吉直樹(またよしなおき)氏の「火花」の発行部数は200万部を突破しているため、「発行部数方式」と仮定して計算すると…、印税は約2億7千万円。今の時代、文芸書で200万部も増刷されることは、ごく稀なことなので”奇跡”と言って良いでしょう。
二次商品からの収入
小説がドラマ化や映画化されると”著作権が発生”するので収入面は安泰になりますが、自分の作品が映画監督やドラマの製作者の目に留まることは稀なので、ベストセラー作家以外のほとんどが”貧乏な作家”なのです…。
作家に向いている人
作家になる人のほとんどは、非常に個性的で基本的に”変わって”います。
365日24時間、仕事を抱えられる人
会社員や公務員などは、お昼休憩1時間を含む、9時~18時の8時間勤務で、残業があったとしても仕事が終わればフリータイムがあります。
また、飲食業やサービス業の場合は、開店、閉店の時間は決まっていて、準備や仕込み、後片付けがあっても、トラブル等がなければ一日の仕事の終わりはやって来ますし、24時間体制の仕事であっても、シフトを組めば交代で休むことが可能ですよね。
ところが、作家に限らず、自由業、特に創作に携わる仕事の場合は”ひとつの作品が完成するまで24時間、常に頭の中には仕事を抱えていることになる”のです。
脱稿して一瞬の解放感は得られるものの、連載を抱えていれば、また、すぐに次回の作品に頭を切り替えなければいけません。
とは言っても…、実際に24時間、原稿用紙やパソコンに向かっているのは物理的に不可能なので、途中で睡眠や食事をとるわけですが、生きていくために必要な休憩をとることによって集中力がプツっと途切れてしまうので、再び、執筆するモチベーションを上げて行くには、かなりの精神力が要るのです。
締切が迫って仕方なく、無理やりモチベーションを上げて行くしかない状況に置かれることも珍しくないので、とにかく、体力気力を温存して自分の気持ちをコントロールしながら上手にペース配分が出来るタイプの人が作家には向いています。
溢れる創作意欲のある人
作家になるための最低条件は「文章を書くことが好きな人・苦にならない人」ですが、さらに、自分の書きたいものが頭の中に溢れてきて、表現しないと苦しくて堪らなくなるタイプの人は作家やアーティストに向いています。
しかし、プロの作家は”自分の書きたいことだけを書き散らかして自己満足する”という訳にはいきません。溢れてくる言葉やアイデアを上手に料理して”読者が楽しんで読める作品に仕上げることが作家としての使命”ですから。
経済的に貧しくても耐えられる人
上記でも述べたように、ほとんどの作家は決して高額所得者ではないため、『作家になって大儲けしよう』と思っている人は、”作家には向いていない”と言えるのです。
作家になる資質に求められるのは、文章を書く才能はもちろんですが、コネやチャンスも大成するには必要なので、どんなに良い作品を書いても経済的には不運な作家もいます。
作家として生きていれば「作家を廃業して定収入の入る安定した仕事に転職する」「収入は少なくても創作する道を全うする」という選択に迫られるときが訪れるでしょう。
独身ならば初志貫徹することも不可能ではありませんが、養わなければいけない家族がいる場合、自分の夢ばかりも追ってはいられないのが現状です。
世間の常識から多少、ズレている人
非常識な人のことを指すのではありません。あまりに常識を知らない人が書く文章は、読者の共感を呼ぶことが難しいからです。
常識的すぎる人は発想に限界があるので、小説家には向かないかも知れません。逆にノンフィクション作家は、常識的な見識と幅広い知識を必要とされます。
妄想癖のある人はストーリー上でのアイデアがどんどん湧いてきて、誇大妄想狂の人はクライマックスを描くのが上手な傾向があるようです。
孤独に耐えられる人
作家の仕事は孤独な作業であり、常に「作品と自分」だけなのです。シンプルな関係ではありますが、作品を仕上げるまでは編集者も読者も誰もそばに居てはくれませんし、家族が精神的に支えてくれたとしても作品と向かい合うのは自分ひとりなのです。
強烈な孤独に耐えられる人、または「孤独と友だちになれる人」が作家には適しています。
基本的に暗い人・複雑な神経の持ち主
友だちとしては、あまり付き合いたくないタイプですが、ダークな部分を知っている人のほうが深みのある内容の作品を描けるのです。それは、繊細な心の機微や弱者や悪者の気持ちまでも想像できるからであり、特に純文学の作家は自己を追究していく作業なので悶々としている人が向いています。
すぐに悩みを解決できて自分を正しい方向に導いていけるタイプで友人としては好人物でも、物事を深く考えることがない人が書いた作品は単純明快でわかりやすいでしょうが、あまり読者の心を打たないかも知れません。
編集者のアドバイスを素直に聞ける人
作品が仕上がったら、次は編集者との闘いが待っています。編集者はどんなに完璧な作品でも、必ず『ここはこうした方が…』とか『中盤がダレてしまうので、変えてください』などと注文をつけてきます。
自分は完璧と思って仕上げた作品に文句を言われるのはプライドが傷つき、もちろん、誰でも面白くないことですが、文芸誌の編集者は”その道のプロ”なのでアドバイスは貴重です。
指摘を受け入れ改善することで、さらに自分の作品の完成度が高くなるのであれば素直に作品を見直せる”心の柔軟性”も大切です。意固地になって編集者とケンカ別れをしてしまっては、今までの苦労が水泡に帰してしまいます。
身分が曖昧でも平気な人
ローンの契約書や賃貸契約書には必ず「職業」を記入する欄がありますが、まず、そこで必ずペンが止まるのが作家なのです。
『さて…、”作家”と書いて良いものだろうか…。いや、”自由業”としておこうか、それとも”執筆業”になるのかな?』と悩んでしまうからです。
誰もが知っている有名な作家で、しかも本名で仕事をしていれば相手も納得するでしょうが、単行本は出したものの初版で増刷もなく、しかもペンネームで仕事をしている作家は残念ながら社会的な信用が得られず怪しまれることが多いのです。
また、年収を書きこむ欄でも躊躇します。『昨年は年収500万円と申告したけれど、今年はたぶん200万円にも満たないかも知れない場合、いくらと記入すれば良いのだろうか…?』と、書類を見つめたまま時間ばかりが経過することもよくある話。
つまり、普通の会社員なら何も悩まないところで神経を使ったり恥ずかしい思いをすることもあるので、作家になるのなら覚悟が必要ですし、図太い神経を養うことをオススメします。
プロの作家になってからも挑戦は続く
作家になる道は、そう容易いことではありません。運よくデビューできたとしても本当の勝負は2作目以降からなので、プレッシャーの重圧に耐える日々は夢を叶えてからも続きます。
人は一生で一作は誰でも傑作が書けると言われています。それまで生きて来た経験や培ってきた人生哲学、後世の人に伝えたい言葉などを、どんな人でも持っているからです。
しかし、問題の2作目に執りかかるときから作家の力量が本当の意味で試され、それは、お笑いの「一発芸人」やミュージシャンの「一発屋」と言われてしまう人と一緒です。
実力が認められ運を掴んで作家になれたら、道は開かれたのですから立ち止まってしまわずに、次の勝負に勇気を持って挑んでいって欲しいです。読者は常に、ワクワクするような面白いストーリーや共感できて胸に残る言葉と出会えるのを待っています。
文章で伝えたい情熱があるのなら、まずはペンを執ってください。またはパソコンに向かってください。そして、書き始めたら短編でも良いので最後まで書き終えてください。その時に何か見えてくるものが必ずあるはずです。
もしかしたら次に感動を与えてくれる作品は、今、このメッセージを読んでくださっている未来の文豪かも知れません。