クレーマー対応のポイント
企業側のミスで顧客に迷惑をかけてしまったときは、第一に誠心誠意お詫びをした上で、その後の対応をしなければなりません。
しかし、明らかに理不尽な要求を言ってくるモンスタークレーマーには、どのように切り返せば良いのでしょうか?
電話では相手の顔が見えない分、お互いに些細な言葉から感情がエスカレートすることがあります。クレーマーの言い分にのまれて理不尽な要求に屈してしまうと、後の対応に困ります。
クレームの電話対応をする際に覚えておきたいのは「電話対応中は実際に暴力を振るわれることはない」ということ。
誠意をもって説明しても、相手が納得せず激怒して暴言を吐かれるなど対応に行き詰った場合でも、身体的な危害を加えられることは無いところが、”電話対応の強み”でもあり、選ぶ言葉一つで相手の”過剰要求を拒むこともできる”のです。
理不尽な要求を拒むことは、ほとんどを占める「普通の良いお客様と会社で働く自分たちを守る手段」でもあるのです。
モンスタークレーマー対応術
マニュアル通りの対応が通用しない、理不尽極まりない要求を突きつけて企業を脅してくる「モンスター」と呼ばれるクレーマーに怯んではいけません。怒りを感情的にぶつけるのは以ての外ですが、低姿勢すぎる「その場しのぎの対応」は、クレームを増長させる原因になるので注意が必要です。
1.怒鳴られても威嚇されても気持ちを強く持つ
自分に「気持ちを強く持つ」と言い聞かせましょう。クレーマーに勝とうとするのではなく、対等に冷静に対応することを心がけるのです。
自分なりのリラックス方法を準備しておくと安心です。クレーマーは担当者を怖がらせようと思っているので、こちらが平静さを失わずに対応を続けると『脅しても無意味だ』と悟らせる効果があります。
クレーム対応中のリラックス方法
- 話始める前に一拍置く
- 深呼吸をする
- 手のひらを揉む
言葉に詰まったら相手の言葉をオウム返しに復唱するのも、こちらが冷静になるためには効果的です。
オウム返し例
▼『俺がこんなに怒っているのはなぜだか解るか?』
→『お客様はとても怒っておられるのですね』
▼『今すぐ商品を持って来い!』
→『すぐに商品を持ってきて欲しいと仰っているのですね』
繰り返し過ぎると『バカにしているのか』と反感を買ってしまいますが、過剰な要求にはワザとオウム返しをして、のらりくらり要求をかわす上級テクニックのひとつなのです。
2.早口でまくしたてられても、自分のペースで話す
早口、堂々巡りや話があちこち飛ぶなど、クレーマーのペースに巻き込まれないように、自分の話すスピードはいつものペースを守って、いつもよりハキハキ話すことを心がけてみましょう。
ハキハキ話すことに意識がいき、冷静に相手の話していることが掴みやすくなります。
コールセンターでは始業前に開口練習をすることが多く、その目的は「開口による発声を促すこと」と「脳の活動を活発化すること」です。ハキハキ話そうとすると的確なカタチに口を開けることに意識が集中するので、脳の活動が良くなり頭の回転が速くなるのです。
3.聞き取れなかったら遠慮なく聞き返す
電話を受けた途端に激怒しているクレーマーがまくし立てて不満をぶつけてくることも多いのですが、話についていけず聞き取れないまま話を進めると、最終的に『客の真剣な訴えを聞いていなかったのか!』と、怒りを増幅させます。対応者が聞き返したことが逆鱗に触れて怒鳴る人もいますが、聞き取れなかったものは仕方ありません。
『お客様のご意見をきちんと確認したかったのです。』と伝えて、相手の話の腰を折ることを怖がらなくても良いのです。
『恐れ入ります、お客様、お手数ですがもう一度仰っていただけますか?』と、問いかける勇気を持ちましょう。話のペースを対応者側に持ってくることも可能になります。
4.過剰要求には屈しない
理不尽なクレームをつけてくる人の目的は「金銭」「自分だけのサービス」など、他人より優遇されたいことがほとんどです。
しかし真っ向から『安くしろ』、『値引きしろ』などの要求は恐喝にあたるので、ハッキリとは言いません。
【やんわりと金銭を要求する例】
- 『これだけ迷惑かけているのだから誠意を見せろ』
- 『どうしたら自分が納得するか考えて結果を言え』
【対処法】
- 『誠意とはどのようなことでございますか?』
- 『お客様が納得してくださるためには、弊社はどのようにすればよろしいでしょうか?』
あくまで「解らないから教えて欲しい」というスタンスを崩さないようにしましょう。
【モンスター対処法】
『では要望を言えば応えてくれるんだな?』
クレーマーが図に乗ってきたらどうするか?
『あくまでご希望として承ります。その後、弊社として判断いたします』と、切り返して、簡単には事が運ばないこと冷静に伝えます。
クレーム電話対応NG例
1.顧客を怒らせないように、その場限りの言い逃れをする
ガンガン怒鳴っているクレーマーが怖くなり『何とかします』と、確認もしないで希望を聞いてしまうと、味を占めて二重三重のクレームを呼び込み、次の機会では『前に便宜を図ってもらったから今回もできるだろう?』と、何でも無いことでも特別対応しなければならなくなります。
企業にとってはイレギュラー対応となるため、費用は持ち出しとなり、例えば商品を待っている他の善良なお客様をお待たせしてクレーマーを優先しなければならなくなります。
2.すぐに全面的に非を認めて謝ってしまう
事実関係を確認せずに『お客様が、おっしゃることはごもっともです。大変申し訳ございませんでした』と謝ってしまうと、クレーマーは言質(げんち)(※証拠になる言葉)として捉えて『非を認めたのだから補償しろ』と難癖をつけてきます。
まず、基本的なお詫びするポイントとして『お客さまにご不快な思いをさせてしまいましたこと深くお詫び申し上げます』と伝えましょう。
この時点では、クレーム内容についてではなく、不快にさせてしまったことに対して謝罪をするのです。ここで一度、謝罪をしておくとクレーマーの気持ちが少し軟化して、どのような目的でクレームを言っているのか探るには有利です。
社会人として普通にお付き合いをしてくれるお客様はありがたい存在です。しかし、残念ながらクレーマーは、もはや”お客様”ではなく不当に企業から金銭をもぎ取ろうと画策してくる悪意の人物です。悪質なクレーマーには毅然と対応する姿勢が大事です。
実例/クレーマーの文句や脅し・切り返し方
1.『訴えてやる』
- 『アナタの名前は?私のブログに対応が悪かったと書き込むわよ』
- 『この商品が欲しかったのにもう売り切れ?まるで詐欺ね。消費生活センターに言うわ』
SNSが発展している現代では、本当に実名をあげて書き込みをしたり脅してくる人が存在します。
【クレーマー対応例】
『書き込むことは、お客様の自由でございます。しかしそのことで実害を被った場合は、しかるべき措置を取らせていただきますので、ご了承ください』
対応側としても、不利益には抗議する準備があることを伝えておきましょう。
2.『担当者をクビにしろ』
理不尽なことを言って担当者を困らせて、思い通りにならなかったためクビにしろというクレームは少なくありません。
【クレーマー対応例】
『お客様にご不快な思いをさせて申し訳ございません。担当者については社内で指導し改善いたします』
人事のついては”社内規定により適切に行うこと”を伝え、毅然と対応します。
3.『個人としてどう思うのか意見を言え』
企業の担当者として対応しているので、個人的見解など言えるはずがありません。
【クレーマー対応例】
『お客様、わたくしはあくまで○○社の担当者としてお話をしております。個人的見解は申し上げられません』
言い切って良いのです。
4.『上席を出せ!』
要求が通らないと上司に代われと言うクレーマーも多いのですが、上司がすぐに対応できないケースもあります。
【クレーマー対応例】
『わたくしが担当者ですので、わたくしがご対応する以外できかねます』
上司に代わっても過剰要求は通らないことを示しましょう。
電話を切らない、何度もかけてくるクレーマー対応術
何時間も同じ話をして根負けさせて要求を通そうとしたり、何回も電話してきて恫喝(どうかつ)するクレーマーには、警察に通報する旨を伝えます。
【クレーマー対応・ステップ1】
『恐れ入りますが、弊社としての結論は先ほど申し上げた通り、お客様のご希望には添いかねます。これ以上お電話をかけてこられたり長時間の対話を強要されるなら、既に業務に支障が出ておりますので警察に通報いたします』
切り札を出しましょう。
その後で、以下のことを告げて「3秒待ってから」切りましょう。
【クレーマー対応・ステップ2】
『これ以上のご対応は出来かねますので、恐れ入りますが電話を切らせていただきます』
3秒待つのは「相手の反応を待った証」になり、相手へ敬意を払う行為です。『一方的に切られた!』と、再び、苦情を言われる原因を作らないために必要な時間なのです。
冷静さと毅然とした態度がカギ
非がある部分に関しては誠心誠意の謝罪を申し上げ、改善策等の提案を行い、お客さまには心から納得していただくことが理想ですよね。
しかし、残念なことに「お客様」という立場を利用して、無理な要求や理不尽なクレームを投げかけてくる方も存在するのは事実です。
企業や従業員にとってお客様は大切な存在ではありますが、モンスタークレーマーと呼ばれる、明らかに悪質で横暴な態度をとりクレームを言ってくる人に対し、安易に屈してしまうことは、決してお互いのためになりません。『できないものは出来ない』と、毅然と伝えることが大切です。
クレームの意図を把握して最善を尽くすためにも、感情的に対応するのではなく心を落ち着かせて相手の言い分に耳を傾けて下さいね。