ローカルバスを乗り継いだジョグジャカルタ旅
ジョグジャカルタ特別市は、インドネシアの首都ジャカルタから東へ飛行機で1時間弱、電車で約8時間の距離に位置します。かつて都として栄えたジョグジャカルタには、多くの世界遺産があります。
現在はイスラム教徒が大多数ですが、かつての仏教やヒンドゥー教の影響を多く残した建築など、見どころが多い街です。バリ島からの日帰りツアーが人気ですが、今回は、自力でローカルバスを乗り継いでジョグジャカルタ観光をしてきました!
そして、インドネシアの一番の魅力は、「人」です。温厚で親切なインドネシアの現地の人たちとの触れ合いに、現地のちょっと不思議なインドネシア式ルールが存在し、興味深い体験をしました。
まずは世界遺産プランバナン寺院遺跡群へ
ジョグジャカルタ市内には「トランス・ジョグジャ(Trans Jogja)」という市内の循環バスが運行しており、一律3,000ルピアとタクシーより大幅にお得な交通機関です。
アジスチプト国際空港(Adisucipto International Airport)から、地下の連絡通路を抜けると、トランスジョグジャのバス乗り場に出ます。女性の乗客も多く、治安はとても良いです。
バス乗り場の係員に3,000ルピアを渡してゲート内に入ります。中心エリアのマリオボロ通り行き(Jl. Malioboro)行きは「1A、1B、3A、3Bの路線」です。バスには添乗員が一緒に乗車しているので、行先を伝えておけば降りるときに教えてくれます。
隣の席の女子高生とお喋り。若い世代は、英語が上手な人もいます。トランスジョグジャのバスは、割と小綺麗なバスで冷房もあり快適です。プランバナンのバス停を降り、プランバナン歴史公園まで徒歩15分程ですが、駅前に止まっていた自転車タクシーを利用することにしました。
東南アジア名物の人力タクシーですが、インドネシアでは「ベチャ」と呼ばれています。
人が乗るスペースが前方にあり、後方がおじさんの自転車です。車道を通るので、信号が変わると一斉に何十台のバイクが背後から追い越して来るためスリル満点です!
次はヒンドゥー寺院「ロロ・ジョングラン」
「プランバナン寺院遺跡群(Candi Prambanan)」は、ヒンドゥー教と仏教の二重聖地となっている遺跡の集合体です。「ロロ・ジョグラン(Candi Loro Jonggurang) 」は、サンジャヤ朝・古マタラム王国の王により8世紀頃に建てられました。当時のジョグジャカルタ周辺では、ヒンドゥー教のサンジャヤ王朝、仏教の シャイレーンドラ王朝の二大勢力がそれぞれ大規模な宗教寺院を築いていたのです。
ロロ・ジョグランの中心となるのは「シヴァ聖堂」「ヴィシュヌ聖堂」「ブラフマー聖堂」の巨大な三塔です。
「シバ聖堂」外側の回廊には、ラーマヤーナの物語など、様々なレリーフが掘られています。かつては6つの塔を中心に200塔以上も建っていたといわれ、現在でも神秘的な雰囲気が漂っています。
プランバナンは、16世紀のジャワ島の大地震で崩壊し、20世紀に復元が始まります。2006年のジャワ島地震の影響を大きく受け、遺跡ではあちこちが補修中でした。欠けてしまったレリーフは、こんな感じで補修されていました。
欠けたレリーフにブロックがそのままぶち込まれていたので、けっこう衝撃を受けました。
ロロ・ジョグランから北に800メートルほどの距離に、世界遺産登録されている「セウ寺院(Candi Sewu)」があります。2016年には修復が完了したのですが、それ以前に訪れたので残念ながら完成形はみられませんでした。
セウ寺院は、プランバナン歴史公園では唯一となる仏教寺院で、二つの宗教が調和し共存していることを意味する貴重な遺跡です。
プランバナン寺院遺跡群
時間/6時~17時
入場料/117,000ルピア
王様の秘密の花園?水の王宮タマンサリ
さあ、壮大な世界観を満喫し、次なる目的地に移動します。タマンサリ(Tamansari)への、プランバナンからのアクセスは「1Aのバスから1Bに乗り換えるルート」になります。
バスの添乗員さんに「タマンサリに行きたい」と伝えれば、乗り換え駅を教えてくれます。
タマンサリは、当時のスルタンによって作られた王室の別邸です。この頃のジョグジャカルタは、イスラム化しており、当時の王はスルタンと呼ばれていました。
ジョグジャカルタには、今でもスルタン一族が暮らす「スルタンパレス(クラトン)」があります。沢山の植物に囲まれた美しい白亜の壁と彫刻、中央の泉が幻想的な空間で、当時の王宮の女官達がここで水浴びをしていたといいます。
泉の正面にある部屋に、小窓があります…。
実は、この小窓からスルタンは女性たちを眺めていて、三階建ての建物はスルタンのプライベートルームだったのです。
タマンサリ(Tamansari)
時間/8時~15時
入場料/15,000ルピア
カメラ持ち込み追加料金/2,000ルピア
タマンサリの近くには、たくさんの「ベチャ」が停車しています。中にはこんなデザインのベチャまでありましたよ。
ボロブドゥール行き恐怖のオンボロバスで3時間半の長旅
先にお伝えしておきますが、私の英語力は中学生レベルのままストップしているのですが、それを踏まえてお読みくださいませ。そんな私が、なんとかボロブドゥールまで辿り着くまでの話を紹介します。
トランスジョグジャで、ギワンガンバスステーション(Terminal Giwangan)に行き、ボロブドゥール(Borobudur)行きのバス乗り場から乗車します。
バス会社が数社あり、それぞれの呼び込みスタッフがいるので、お金を払って乗車します。外国人がいると「ボロブドゥーーーール?」と訊いてくれます。タクシーだと1時間半ほどの距離ですが、旅費節約のために無謀にも一般のバスを使うことにしました。
本日の最終バスになんとか間に合い(?)、ごく普通のレベルのバスを案内され、乗客が満員になるまで待ってから出発します。ボロブドゥール行きのバスは朝の6時~17時頃まで約30分間隔で運行しています。所要時間は約1時間半で乗車料金は20,000ルピアです。
車内は蒸し風呂状態で、床は食べ物のゴミでいっぱいです。スナックの袋とかじゃなくて、ピーナッツのからやバナナの皮なんて本格的な感じのゴミです。
バスが満員になりいよいよ出発!ホッとしたのも束の間、客を乗せているバスとは思えないような猛スピードで市内を走り、どんどん道端で乗客を拾います。
バスの揺れにも慣れてウトウトしていると、膝の上になにか違和感が・・・。ん?パっと目を開けると膝の上にピーナッツ(?)のような木の実に謎のキャンディーが置かれています。いつの間に現れたのか、物売りのおばちゃんが車内で何かを売り歩いていました。
買う気がなかったので、「ノーノー」と突き返したのですが、おばちゃんは負けずに「%&’$#~」と言葉を返してきて、また膝の上にキャンディーを置こうとします。押し売りされるのは嫌なので返そうとするも、受け取ってくれません。
見かねた隣の席のおばちゃんが、「大丈夫よ!とりあえず受け取ってあげて」みたいなことを言っています。
よくよく辺りを見て状況を分析してみたところ、行商のおばちゃんたちは信号で停まった時にバス前方の入り口から乗り込み、乗客の膝の上に商品を置いていきます。そして一番後ろまで回ると、折り返してきて、商品を食べ始めている人からは料金を徴収し、要らない人からは商品を回収していきます。
う~ん、謎のシステムです…。おばちゃんたちからすると、話も聞かずに断るんじゃなくて、「とりあえず商品を吟味してから、買うか買わないか決めて頂戴!」といった感じなのですが、「食べちゃったのに買わない」だなんて…、日本の感覚で激しく拒否したことを少し後悔…。謎のインドネシアルールです。初めて体験しました。
そしておばちゃんは、次の信号で降りて行き、また違った行商がバスに乗り込んできます。今度は手作りのお菓子などを売り始め、バスの床はピーナッツの殻やゴミだらけになって行きます。
次に乗り込んで来た人たちは印象的でした。なんと!流しのミュージシャン3人組です。ボーカル担当にギターまで持ち込んでる…。そして、一曲だけでは止まらずに、ノリノリでインドネシア歌謡曲を数曲演奏します。
最後に演奏を頼んだ覚えがないのにチップを要求されましたが、寝たふりで回避できました。チップでひと稼ぎしたミュージシャンは、また次の信号で降りて行きます。
インドネシアってすごいわ!ワイルドだわ!
すべてが衝撃です。バスで生演奏を聴くことになるんなんて…。なんとなくこのバスに愛着がわいてきたなと思った所でターミナルに到着し、いきなり私と欧米人カップルと外国人と思える人たちがバスから降ろされ、ドアが付いてないオンボロバスに詰め込まれます。
英語がわからない私は「なぜ乗り換えなのか理解できなかった」のですが、バスは走り出しました…。座席は壊れていて紐で固定されているような状態だったのですが、それでデコボコ道を走るのでお尻が激痛でした。
私の推測なのですが、恐らく、夕方の5時過ぎにバスに乗ったので、乗り継ぎ便しかボロブドゥール行きがなかったのだと思われます…。
乗り換えたバスは大通りでなく、現地の人たちが住んでいるエリアを通るバスで、ジャングルの中のエリアをかなり回り道してからボロブドゥールに行くルートなので、渋滞に巻き込まれたこともあり、結局、3時間半ほどバスに乗るハメになりました。
あまりの渋滞で苛立つ乗客に車内の雰囲気もピリピリしています。満員すぎて座席をゲットできなくて怒りのピークに達した欧米人カップルがケンカを始めるし…、揺れと蒸し暑さから胃の辺りがムカムカしてくるし、道が整備されていないので、急カーブでは椅子から振り落とされそうになるのにバスにドアが無い!今となっては楽しい旅の思い出として語れますが、当時は泣きたい気分で身も心もボロボロでした(笑)
ボロブドゥールに付いた時には、辺りは真っ暗でした。ホテルは、ボロブドゥールの敷地内にある「マノハラホテル」です。ジャワ様式の建物でロビーに入るとインドネシア音楽でのお出迎えがありました。
絶景!ボロブドゥールから見る日の出
マノハラホテルは、ボロブドゥール( Borobudur)の敷地内に建つ唯一のホテルで「サンライズツアー」を開催しています。早朝の4時半にホテルのロビーに集合し、真っ暗の中で配られた懐中電灯の光を頼りに進んで行きます。
ボロブドゥールは通常6時の開園なので、サンライズを見たい場合はマノハラホテルからツアーで参加することになります。
サンライズ参加料金
・ホテル宿泊者/25,000ルピア
・一般外国観光客/40,000ルピア
・現地人観光客/27,000ルピア
観光客価格とローカル価格の差が大きいですが、私たちは現地の人たちの何倍もの収入があるので、楽しい思い出をくれた町にお返しするつもりで、気持ちよく外国人価格を支払ってきました!
徒歩10分程でボロブドゥールに到着。まだ薄暗い中、寝ぼけながら階段を登ります。ベストポジションを見つけ座り、日の出を待ちます。
大手旅行会社に引率された日本語ツアーの参加者も一緒だったので、聞く気はないのにガイドさんの説明が耳に入ってきてラッキーでした!ありがとうございます!
当時、このエリアでは仏教が一大勢力でしたが、現在、ボロブドゥール周辺には仏教徒はほぼ居ないとガイドさんが説明していました。また、ユネスコの世界遺産に認定されています。
どんどん空が明るくなり、陽が昇ります。カメラにもしっかり写っていますが、実物は言葉にできないほどの感動があります。
明るくなってくるとボロブドゥールの全体像が見えてきます。遺跡の近くは当たり一帯はジャングルが広がっており、朝の霧が掛かっているジャングルは一層美しく感じられました。
世界最大級の仏塔(ストゥーパ)で釣鐘上になっている部分は全部で72基あり、それぞれの中に仏像が置かれています。ストゥーパの外側から仏像に手が届くと願いが叶うという言い伝えがあり、挑戦している人が沢山いました。
登った時は暗くてよく見えなかったのですが、日の出後のボロブドゥールです。
ホテルに帰り、マノハラホテルで朝食をとって一休み。
朝9時のフライトなので、タクシーで空港を目指します。帰りのジョグジャカルタ空港では、天候不良からの飛行機の延着で乗客がフロアに溢れて過密状態に…。最後の最後までインドネシアらしさ満載でした。
刺激的な旅の思い出ができました
今回はバリ島から、ジャカルタへの移動中にジョグジャカルタに1泊2日で滞在しました。ジョグジャカルタは、仏教、ヒンドゥー教、イスラム教と様々な文化が共存しており、インドネシアが辿ってきた歴史を肌で感じることが出来ました。
人々は親切で日本とは全く異なる文化や、時おり出会う、謎の習慣が面白くて異国間を満喫する旅行をしたい女子にオススメです。