残りがちなハーブの美味しい使い方
ヨーロッパでは、マザーグースのスカボロフェアという歌にも「パセリ、セージ、ローズマリー、そしてタイム」とハーブの名前が上がるほど古くから親しまれていますが、日本が西洋の薬味を使い始めたのは近年に入ってからです。
ハーブを料理の香りや風味付け、見た目の彩りを良くするために使う人も多く、健康や美容に関心の高い人の中には興味のある人も多いでしょう。しかし、ハーブを買っても使いきれずに、冷蔵庫の隅でパサパサになっていた…という経験もあるのでは?
今回は万能アイテム「ハーブ」の、料理での使い方はもちろん他の使い道も紹介します。
臭み消しとして料理に使う
香りの強いローリエや刺激的な香りのローズマリーは、肉料理や魚料理の臭み消しとして、ヨーロッパでは古くから使われてきました。
特に特有の臭みを持つ豚肉やクセの強い羊肉は、セージやクローブといった香りの強いハーブやスパイスを使うのがおすすめです(注1)。
ローリエは長時間煮込むと苦みが出てしまうので、ある程度煮たら取り出しましょう。
また、魚料理に使う場合は魚の臭みを抑えることを考えるだけでなく、中華や西洋といった料理のジャンルによって使うハーブを変えましょう。
「ハーブにはビタミンが豊富!」と謳う記事がありますが、ビタミンの量はハーブの種類によって違います(注2)。
ハーブの種類 |
収穫地 |
ビタミンCの量 (mg/100g fr.wt.) |
オレガノ | 北海道 | 170 ± 8 <6.1> |
ミント | 愛知県 | 118 ± 11 <4.2> |
バジル | 北海道 | 110 ± 13 <3.9> |
セージ | 愛知県 | 82 ± 3 <2.9> |
セージ | 北海道 | 59 ± 2 <2.1> |
タイム | 北海道 | 75 ± 7 <2.7> |
ローズマリー | 愛知県 | 62 ± 3 <2.2> |
チャービル | 北海道 | 130 ± 5 <4.6> |
コリアンダー | 北海道 | 117 ± 2 <4.2> |
コリアンダー | 愛知県 | 91 ± 1 <3.3> |
フェンネル | 北海道 | 101 ± 16 <3.6> |
ディル | 北海道 | 87 ± 7 <3.1> |
ディル | 愛知県 | 79 ± 11 <2.8> |
キャラウェイ | 愛知県 | 83 ± 12 <3.0> |
チャイブ | 北海道 | 45 ± 3 <1.6> |
ホウレン草 | 長野県 | 28 ± 2 <1.0> |
・mg/100g fr.wt.は「100g辺りに含まれる特定成分の定量値」を指す
・< >内の各数値はホウレン草を 1.0 としたときの総ビタミンCの相対値
ハーブからビタミンを摂りたい場合は、キチンと調べてから使いましょう。また、いくつかのハーブには副作用があります(注3)。主治医や薬剤師に相談してから適切な量を摂取してください。
飲み物に混ぜる
ハーブと飲み物と言えば「ハーブティー」が一番に出てくるでしょう。紅茶にオレンジピールやオレンジブロッサムいったハーブを入れると、香りが豊かになって美味しくなります。ハーブと混ぜる紅茶はクセの無いものを選ぶと、香りや風味がケンカしにくいでしょう。
また、何千年も前から薬草として使われてきたジャーマンカモミールは、今も不眠に効果があるとして、就寝前にカモミールティーを飲む民間療法があります。ただし、キク科植物にアレルギー反応を起こす人は、カモミールにも反応する可能性が高いのでアレルギー持ちの方は控えましょう(注4)。
「ハーブ+飲料」は何も、ハーブティーだけではありません。メキシコにはカフェ・デ・オーやと呼ばれるシナモン風味のコーヒーがあったり、アメリカの冬の定番エッグノックという牛乳と卵にナツメグの香りがするドリンクがあったりします。
夏におすすめなのはミント水。人によって作り方は違いますが、沢山のミントと水を鍋に入れて煮だしてから冷まし、冷蔵庫で保管します。
飲み物が欲しい時でも、甘いものを飲まずにミント水を飲めば健康的です。ペパーミント油とキャラウェイ油を併用すると消化を助ける効能がある可能性があります(注5)。
カレールーを作る
カレーが大好きでよく作る家庭なら、ハーブを買っても余ることはありません。なぜなら、市販のカレールーを一切使わなくてもハーブで作れてしまうからです!
カレーを作るときに、鍋へドライハーブ(または粉末)を投入すると美味しくなります。初めて市販ルーを使わずに作る場合は、カレースパイスの基本4つ「クミン」「コリアンダー」「ターメリック」「チリパウダー」を使いましょう。
慣れてきたら、ガラムマサラやカルダモンなど他のハーブやスパイスも混ぜてみると良いでしょう。
家にクミンなど複数のハーブを沢山置いてあっても、カレーを作るためにいつも使っていたら、余らずに使いきれるようになります。
オリジナルドレッシングを作る
ハーブの香りが食欲を刺激するドレッシングやビネガーを手作りするのも、オススメの活用方法です。酢、塩、オリーブオイルに好みのハーブからドレッシングを作ったり、リンゴ酢とドライハーブを混ぜてハーブビネガーを作ったり出来ます。
フレッシュハーブのローズマリーやバジルをオリーブオイルに混ぜたものを密閉出来るビンに入れ、暗所で保存するのがより良いです(注6)。
無駄なものが入っていないと分かっているので、安心してサラダやマリネなど様々な料理に使えます。
大葉のおかずを作る
ハーブというか薬味になりますが、大葉も余ってしまう食材の一つでしょう。余ってしまシソを細切りにして白だしやめんつゆに浸けて一晩置いておくと、翌日にはご飯が進む魅力的なおかずが完成しています。豆腐に乗せたり納豆や卵焼きに混ぜたりしても、とっても美味しいです。
大葉だけでは物足りないなと思う方は、好きな魚の切り身やゴマを一緒に浸けると良いでしょう。シソの香りとさっぱりとした風味が、魚の臭みを緩和し、よりご飯が止まらない美味しいおかずになるでしょう。
アイスキューブを作る
夏になると涼を求めて氷を作る方は多いでしょう。ちょっとおしゃれな「ハーブアイスキューブ」を使って、食卓の彩りを豊かにしませんか?
製氷皿を用意し、余ったフレッシュハーブやフルーツを入れて水を張って凍らせれば、見た目から涼やかなアイスキューブの出来上がりです。使う際は、凍ったままスープやそうめんに入れれば時短になりますし、フルーツ入りのものなら炭酸水に入れるとパッと華やかになります。
また、水の代わりにココナッツオイルを使うのも、氷で作る以上にパスタやグリルに使いやすくオススメです。20~25度で固まるので、冷蔵庫で保存出来るのも嬉しいポイントです。
ハーブバターを作る
バターにハーブやスパイスを混ぜたハーブバターは、彩りや風味付けにぴったりの調味料なのです!基本はバターと好みのフレッシュハーブ、ニンニクがあればできちゃいます。作り方は、常温に戻したバターにみじん切りにしたハーブ、すりおろしニンニクを混ぜ、また固めるだけで簡単に完成します。
料理に使うのはもちろんのこと、トーストに塗っても美味しくなります。また、パンやクラッカーのディップとしても使えるので、パーティーを開くときにもオススメです。
うがい薬を作る
余ってしまったハーブをウォッカに浸けて、時々振り交ぜながら一週間置くと完成します。アルコールがダメな人や子供にはハチミツに浸けても良く、紅茶に加えて飲んでも美味しくいただけます。
使うハーブはなんでもよいですが、セージやタイムには抗菌作用があるので特にオススメです(注7)。ウォッカベースもはちみつベースも常温保存が可能ですが、後者は冷蔵庫保存の方が長く食べられます。また、浸けているハーブが空気に触れるとカビが生える恐れがあるので、なるべく早く使い切りましょう(注8)。
ポプリを作る
自宅でハーブを栽培している方も少なくないと思いますが、収穫したもの全てを料理や紅茶として使い切るのも限界があるでしょう。ハーブといえば良い香りですので、上手く活かして使いたい方にオススメなのが、オリジナルポプリ作りです。
小さな麻袋やお茶を入れるときに使うメッシュフィルターに、ハーブを入れると簡単にポプリが完成します。他人の目に触れる可能性がある場合は、可愛らしい袋に入れるといいでしょう。消臭として靴箱や部屋に置いたり、携帯してリラックスしたい時に香りを嗅いだりという使い方が出来ます。
また、部屋に置いて芳香剤代わりとして使う場合は、ガラス瓶に入れて置くと良いでしょう。タグやステッカーでデコレーションして、お洒落な置物としても使えます。
ハーブの色々な使い方
健康や美容に良いと聞いて買ったものの、使う料理が限定されていてあまり使わないままに、冷蔵庫でミイラ化…なんてことになる前に、今回紹介したハーブの使い方を実践してみてください。
普段から使う人も、この記事を読んで興味がわいた人も、美味しく楽しく毎日の生活の中にハーブを取り入れてくださいね!
参考文献
- 注1:エスビー食品株式会社「スパイス&ハーブ事典」
- 注2:J-STAGE「新 鮮 ハ ー ブ の ビ タ ミンC量,DPPHラ ジ カ ル 捕 捉 活 性 お よ び ポ リフ ェ ノ ー ル 量」-「1.新 鮮 ハ ーブの ビタ ミンC量」参照
- 注3:日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ「自然の薬箱、ハーブ―薬と食品の境界線」- 2.「食品」のハーブと副作用を参照
- 注4:「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 - カモミール「はじめに」を参照
- 注5:「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 - ペパーミント油「科学的根拠」を参照
- 注6:日本家政学会誌「ハーブオイルの酸化安定性」
- 注7:J-STAGE「香辛料の抗菌性と食品保蔵への応用」-「1.6作用温度とpH」参照
- 注8:とっておきのハーブ生活「ハーブな暮らし1月」-「idea2タイムのうがい薬と咳止めシロップ」参照